海外移住オンライン海外移住 / ビザ / ノマド / 各国の税金

海外移住ガイド ›

海外赴任(駐在員)の税金と社会保険:非居住者の判定・出国時の年末調整・社会保障協定をわかりやすく解説(2026年)

最終確認: 2026-10(公的機関の情報をもとに作成)

日本の会社から1年以上の予定で海外の支店や子会社に赴任する人は、所得税法上、原則として出国の時から非居住者として扱われ、海外勤務に対する給与には原則として日本の所得税がかかりません。一方で、健康保険と厚生年金保険は日本の会社との雇用関係と給与の支払が続く限り原則として継続し、赴任先の国と社会保障協定があれば「適用証明書」で現地制度への二重加入を避けられます。出国前の年末調整、役員報酬や賞与の扱い、日本に残した自宅、住民税、帰任時の年末調整まで、赴任の前後で必要になる手続を順に整理します。

1年以上の海外赴任で「非居住者」になる仕組み

所得税法では、国内に「住所」を有するか、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人を居住者、それ以外の個人を非居住者といいます。住所は「生活の本拠」をいい、客観的な事実で判定します。

海外赴任の場合は、所得税法施行令第15条の「住所の推定」が重要です。国外に居住することとなった人が、国外で継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を持つ場合は、国内に住所を有しない者と推定されます。国税庁は、1年以上の予定で海外の支店などに転勤したり海外の子会社に出向したりする人は、国外での在留期間があらかじめ1年未満であることが明らかな場合を除き、原則として非居住者と推定されると説明しています。生計を一にする配偶者や扶養親族が一緒に国外に住む場合は、家族も国内に住所を有しない者と推定されます。

非居住者として扱われるのは出国の時からで、確定申告の計算では出国(転出)した日の翌日からその年の12月31日までが「非居住者期間」になります。非居住者は日本国内で生じた「国内源泉所得」だけが課税対象です。

出国前に必要な税金の手続:年末調整と納税管理人

1年以上の予定で海外に転勤する人に対しては、会社(給与の支払者)が出国の日までに年末調整をしなければなりません。対象は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していて、その年に支払が確定した給与が2,000万円以下の人です。居住者としての最後の給与の支給の際に、それまでに源泉徴収された所得税を精算します。

出国時の年末調整では、通常の12月の年末調整と次の点が異なります。

赴任中の給与・役員報酬・賞与の課税

非居住者となった使用人(従業員)の海外での勤務に対する給与は国内源泉所得に当たらないため、日本では源泉徴収の必要がありません。国税庁は、たとえ給与が日本の本社から支払われていても、勤務地が外国であれば原則として日本の所得税は課税されないと説明しています。課税関係を決めるのは支払場所ではなく、どこで勤務したかです。

取扱いが大きく異なるのが、日本の会社(内国法人)の役員です。内国法人の役員として受ける報酬は、海外勤務に対するものであっても国内源泉所得とされ、支払の際に20.42%の税率で源泉徴収されます。ただし、海外支店の支店長のように、その内国法人の使用人として常時海外で勤務している役員の場合は、源泉徴収の必要はありません。

日本に残した自宅・不動産所得と住宅ローン控除

赴任中に日本の自宅を貸す場合など、非居住者に国内の不動産の貸付けによる所得(不動産所得)や国内の不動産の譲渡による所得があるときは、総合課税の対象として日本で確定申告が必要になる場合があります。申告は翌年2月16日から3月15日までの間に、納税管理人を通じて行います。年を通して海外勤務をしている場合も、国内源泉所得の金額が所得控除の合計額を超えれば、原則として確定申告が必要です。

非居住者に国内の不動産の賃料を払う借主は、法人だけでなく個人(事業者かどうかを問いません)も、支払の際に20.42%の源泉徴収をしなければなりません。ただし、自分や親族が住むために借りた個人が支払う賃料は源泉徴収の対象外です。源泉徴収された税額は、確定申告で精算(還付請求)できます。不動産所得の金額の計算方法は居住者と同じです。

赴任中の住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、家族が自宅に残るかどうかで扱いが分かれます。

厚生年金・健康保険の継続と社会保障協定の適用証明書

健康保険と厚生年金保険は、適用事業所に勤務する限り、国内に住所があるかどうかを問わず加入します。日本年金機構は、日本の適用事業所との雇用関係が続いたまま海外で勤務し、出向元から給与の一部または全部が支払われている場合は、原則として健康保険・厚生年金保険の加入が継続すると説明しています。海外の事業所から支払われる給与でも、日本の会社の給与規定や出向規定などにより実質的に日本の会社から支払われていると確認できるものは、標準報酬月額の算定の基礎となる報酬に含まれます。

その場合、赴任先の国の社会保障制度にも加入しなければならず、保険料を二重に負担することがあります。これを調整するのが社会保障協定です。日本年金機構によると、2025年12月1日にオーストリアとの協定が発効し、日本は24か国との間で協定が発効しています(英国、韓国、中国、イタリアとの協定は保険料の二重負担防止のみ)。協定相手国へ5年を超えない見込みで派遣される場合は、引き続き日本の制度のみに加入し、相手国の制度への加入が免除されます。

同行する家族の扶養と住民税

健康保険の被扶養者と国民年金第3号被保険者の認定には、令和2年4月1日から日本国内に住所を有すること(住民票があること)が要件になっています。ただし、海外赴任に同行する家族などは「海外特例要件」に該当すれば、届出により被扶養者として認定されます。家族が赴任に同行して出国したときは、被扶養者(異動)届または第3号被保険者関係届で届け出ます。添付書類は、査証(ビザ)、海外赴任辞令、海外の公的機関が発行する居住証明書の写しなどです。帰任に伴い家族が帰国したときにも届出が必要です。

個人住民税は、その年の1月1日時点で住所がある市区町村が、前年1月1日から12月31日までの所得をもとに課税します。所得割の税率は10%(道府県民税4%、市町村民税6%)、均等割は4,000円で、令和6年度からは森林環境税(国税)1,000円が均等割とあわせて徴収されています。

帰任したとき:帰国後の給与・年末調整・確定申告

帰国して居住者になると、国内源泉所得に限らずすべての所得が日本で課税されます。帰国後(居住者となった日以後)に支給期が来る給与は、その中に非居住者だった期間の勤務に対応する部分や、海外勤務中が査定期間に含まれる賞与が含まれていても、総額を居住者への給与として源泉徴収します。

年末調整は、帰国日以後に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していれば、帰国日以後その年末までに支給期が来る給与を対象に行います。

よくある質問

Q. 海外赴任中も日本の本社から給与が振り込まれますが、日本の所得税はかかりますか?

A. 1年以上の予定で赴任して非居住者になった従業員の場合、海外での勤務に対する給与は国内源泉所得に当たらず、日本の本社から支払われていても原則として日本の所得税は課税されません。ただし、出国後に支払われる賞与のうち日本で勤務した期間に対応する部分や、一時帰国中の日本での勤務に対応する部分は、20.42%の源泉徴収の対象になります。

Q. 日本の会社の取締役として海外の子会社に赴任します。報酬の扱いは従業員と同じですか?

A. 異なります。内国法人の役員として受ける報酬は、海外勤務に対するものであっても国内源泉所得とされ、20.42%の税率で源泉徴収されます。ただし、海外支店の支店長のように、その内国法人の使用人として常時海外で勤務している場合は源泉徴収の必要はありません。

Q. 出国前の年末調整では、生命保険料控除や扶養控除はどうなりますか?

A. 社会保険料や生命保険料などの保険料控除は、出国の日までに支払った分が対象です。扶養控除や配偶者控除などは出国の時の現況で判定し、配偶者や扶養親族の所得は出国の時の現況でその年1年分を見積もって判断します。年末調整は、1年以上の予定で転勤する人に対して会社が出国の日までに行います。

Q. 社会保障協定がある国に3年間赴任します。現地の年金保険料も払う必要がありますか?

A. 協定相手国へ5年を超えない見込みで派遣される場合は、引き続き日本の制度(厚生年金保険など)のみに加入し、相手国の制度への加入が免除されます。そのためには、日本の事業主が年金事務所に適用証明書の交付を申請し(就労開始予定日のおおむね6か月前から可能)、交付された適用証明書を赴任先の事業所に提出します。免除の対象となる制度は協定ごとに異なります。

Q. 家族を日本に残して単身赴任します。住宅ローン控除は続けられますか?

A. 平成28年4月1日以後に取得等した住宅で、生計を一にする家族が住み続け、赴任が終われば本人も一緒に住むと認められる場合は、非居住者であっても控除の対象になります。ただし、出国前の給与所得や出国後の国内の不動産所得など、総合課税の対象となる国内源泉所得がある年分に限られます。家族全員で赴任して自宅に住まなくなる場合は、事前に届出書を出しておくと、帰任後に残りの控除期間について再適用を受けられることがあります。

Q. 海外赴任中も住民税はかかりますか?

A. 個人住民税は1月1日時点で住所がある市区町村が課税します。出国した年度の住民税(前年の所得に対するもの)は納める必要があり、給与天引きの人は最後の給与からの一括徴収か普通徴収に切り替わります。翌年1月1日に国内に住所がなければ翌年度の住民税は課税されず、赴任中は原則としてかかりません。

出典

本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、税務・法務の助言ではありません。個別の状況については税理士・税務署・年金事務所・市区町村などに確認してください。

週刊ダイジェスト(無料)

制度改正などの最新の動きを、毎週月曜にメールでまとめてお届けします。

関連ニュース

住民税は会社負担できる? 特別徴収の仕組みと「会社が本当に ...

LIMO日本語

会社は住民税を立て替えているかについて、特別徴収の仕組みや転職時の引き継ぎ、海外赴任時のグロスアップの違いを整理して解説。住民税は会社が負担してくれると感じることがあるが、実際は毎月天引きされている。 詳細

ママ友の夫が海外赴任になってから、車を買ったり旅行に行ったりと、以前よりかなり裕福になったように見えます。海外赴任すると年収はどれくらい上がるのでしょうか?

ファイナンシャルフィールド日本語

海外赴任後の年収は、日本勤務時の1.5倍程度になるケースもあります。例えば、日本勤務時の年収が700万円であれば、単純計算で1050万円程度になるイメージです。ただし、海外赴任者をすれば、必ず年収が一定の割合で増えるわけではありません。給与制度は会社ごとに異なるうえ、赴任する国や地域、役職、単身赴任か家族帯同かによっても待遇に差が生じます。 詳細

ほかのガイド

関連: 国別比較 / 国別ビザ・税制サマリー