日本国民が自分の意思で外国の国籍を取得すると、その時に日本国籍を失います(国籍法11条1項)。一方、出生などで二重国籍になった人には国籍を選ぶ期限があり、外国の永住権を取るだけなら日本国籍は失いません。移住先で市民権を取る前に、国籍喪失届、日本での在留資格、旅券、再取得の条件まで知っておくと、後で困ることを避けられます。
外国の国籍を自分の意思で取ると日本国籍を失う(国籍法11条)
国籍法11条1項は「日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」と定めています。法務省の国籍Q&Aは、外国に帰化した場合などは自動的に日本国籍を失うと説明しています。届出や許可を待たずに、外国の国籍を取得した時点で日本国籍がなくなるのが特徴です。移住先で長く暮らし、選挙権や現地のパスポートのために市民権を取る場合は、この規定に当たります。
投資によって市民権を得る制度(市民権投資プログラム)も、自分で申請してその国の国籍を得るものであれば、条文上は「自己の志望によつて外国の国籍を取得したとき」に当たると考えられます(法務省のQ&Aが例として挙げているのは帰化です)。これに対し、投資や就労でその国に住む権利(居住権・永住権)を得るだけの制度は、国籍の取得ではありません。どちらの制度かは、申請前にその国の法令と日本の在外公館や法務局で確認してください。
もう一つ、日本と外国の国籍をすでに持っている人が、その外国の法令に従ってその国の国籍を選択したときも、日本国籍を失います(同条2項)。日本の国籍を自分から手放す方法としては、ほかに法務大臣への国籍離脱の届出(同法13条)があり、届出の時に日本国籍を失います。法務省によると、離脱の効果は本人だけに生じ、配偶者や子には及びません。家族の国籍は一人ずつ考える必要があります。
国籍喪失届:事実を知った日から1か月以内(国外にいれば3か月以内)
日本国籍を失ったときは、戸籍に反映させるために国籍喪失届を出します。戸籍法103条により、届出をするのは本人、配偶者または四親等内の親族で、期限は国籍喪失の事実を知った日から1か月以内です。届出をすべき人がその日に国外にいるときは、3か月以内になります。届書には国籍喪失の原因と年月日、新たに取得した外国の国籍を書き、国籍喪失を証する書面(外国の国籍を取得したことを証明する書類など)を添付します。
外国にいる日本人は、その国にある日本の大使館・総領事館に戸籍の届出ができます(戸籍法40条)。法務省も、外国の法令で外国国籍を選択した場合の国籍喪失届の届出先を、市区町村役場または在外公館と案内しています。届出が受理されると、国籍を失った人は戸籍から除かれます(同法23条)。必要書類の細部や訳文の要否は、提出先の在外公館や本籍地の市区町村で事前に確認してください。
- 日本国籍は外国籍を取得した時点で失われており、国籍喪失届はその事実を戸籍に反映させるための届出です。届出をしないままでも日本国民に戻るわけではありません
- 正当な理由なく期間内に届出をしないと、5万円以下の過料の対象になります(戸籍法137条)。期間を過ぎた届出も受理されます(同法46条)
- 官庁や公署が職務上、国籍を失った人がいることを知ったときは、本籍地の市町村長に国籍喪失の報告をします(同法105条)
- 二重国籍の人が外国の国籍を離脱したときは、日本の国籍喪失届ではなく「外国国籍喪失届」を、同じく1か月以内(国外にいれば3か月以内)に出します(同法106条)
二重国籍の人の国籍選択:期限は20歳まで、または2年以内
生まれた国の国籍も取得した子や、親の一方が外国籍の子など、自分の意思によらずに二重国籍になった人は、11条ではなく国籍選択の問題になります。国籍法14条1項により、二重国籍になった時が18歳未満なら20歳に達するまでに、18歳以後なら二重国籍になった時から2年以内に、どちらかの国籍を選ばなければなりません。期限は成年年齢の引下げに合わせて2022年4月1日に改められました。
改正前は、20歳未満で二重国籍になった場合は22歳まで、20歳以後なら2年以内でした。改正法(平成30年法律第59号)の附則13条により、2022年4月1日の時点で20歳以上だった二重国籍の人には、改正前の期限(22歳まで、または2年以内)が引き続き適用されます。同日時点で18歳・19歳だった人は同日に二重国籍になったものとみなされ、そこから2年以内が期限とされたため、すでに期限を過ぎています。同日時点で18歳未満だった人とそれ以後に二重国籍になった人は、新しい期限(20歳まで、または2年以内)です。
- 日本国籍を選ぶ方法:外国の国籍を離脱して「外国国籍喪失届」を出すか、市区町村役場または在外公館に「国籍選択届」(日本国籍を選択し外国国籍を放棄する旨の宣言)を出します。法務省によると、国籍選択届に手数料はかからず、添付書類も原則不要です
- 選択の宣言をしても、外国の国籍を当然に失うかはその国の制度次第です。失わない場合は、外国国籍の離脱に努めなければなりません(国籍法16条1項)
- 外国の国籍を選ぶ方法:法務局・地方法務局または在外公館に「国籍離脱届」を出すか、外国の法令でその国の国籍を選択したうえで「国籍喪失届」を出します
- 本人が15歳未満のときは、法定代理人(通常は親)が代わって手続をします(同法18条)
選択しないとどうなるか:法務大臣の催告と国籍の喪失
法務省は、期限を過ぎても国籍を選ぶ義務は残ると案内しています。期限内に日本国籍を選択しない人に対し、法務大臣は書面で国籍の選択を催告することができます(国籍法15条1項)。相手が外国にいるときは、その国に駐在する領事官を経由して催告できます(国籍法施行規則6条)。所在が分からないなど書面で催告できない事情があるときは官報に掲載して行い、掲載日の翌日に届いたものとみなされます(同法15条2項)。
催告を受けた人は、催告を受けた日から1か月以内に日本国籍を選択しなければ、その期間が過ぎた時に日本国籍を失います(同条3項)。天災など本人の責任ではない事情で選択できなかった場合は、選択できるようになった時から2週間以内に選択すれば失いません。なお、市区町村長は戸籍事務の中で期限内に選択していないと思われる人を見つけたときは、法務局に通知することになっています(戸籍法104条の3)。また、選択の宣言をした人が自分の意思で外国の公務員の職に就き、それが日本国籍を選んだ趣旨に著しく反すると認められるときは、法務大臣が日本国籍の喪失を宣告できます(国籍法16条2項)。
海外で生まれた子の国籍留保:3か月以内に出生届と一緒に
日本国民の子が国外で生まれ、出生によって外国の国籍も取得したときは、日本国籍を留保する意思を表示しなければ、出生の時にさかのぼって日本国籍を失います(国籍法12条)。留保の届出は、出生届をすることができる父母などが、出生の日から3か月以内に、出生届とともにしなければなりません(戸籍法104条)。法務省は、出生届の用紙に「日本国籍を留保する」旨を記載する方法で行うと説明しており、届出先は在外公館または市区町村役場です。天災など届出人の責任ではない事情で期間内に届け出られないときは、届出ができるようになった時から14日以内です。
留保をした子は二重国籍になり、前述の国籍選択(20歳まで)の対象になります。留保をしなかったために日本国籍を失った子は、18歳未満で日本に住所があれば、法務大臣への届出で日本国籍を再取得できます(次の節を参照)。海外に住み続ける家族にとっては、3か月以内に留保の届出をしておくことが最も確実です。
日本国籍を失った後に日本に住む・滞在するには
日本国籍を失った人は、法律上は外国人です。日本に入国するときは外国の旅券で上陸の手続を受け、住むには在留資格が必要になります。日本人の親から生まれた元日本人は、出入国管理及び難民認定法(入管法)別表第二の「日本人の配偶者等」(日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者)に当たる場合があります。出入国在留管理庁はこの在留資格の在留期間を5年、3年、1年または6月としています。該当するかどうかや必要書類は、出入国在留管理庁で確認してください。
日本にいる間に日本国籍を離脱した人などは、離脱した日から60日までは在留資格がなくても日本に在留できます(入管法22条の2第1項)。60日を超えて在留するには、離脱した日から30日以内に、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署に在留資格の取得を申請しなければなりません(同条2項)。法務省の国籍離脱の届出の案内でも、離脱後も日本に在留する場合は30日以内の申請が必要とされています。出入国在留管理庁によると在留資格取得許可申請の手数料はかからず、この手続で永住者の在留資格の取得を申請することもできます(その場合も手数料はかかりません)。
日本の旅券(パスポート)は国籍を失った時点で無効
旅券法18条1項1号により、旅券は名義人が日本の国籍を失ったときに効力を失います。有効期間が残っていても、国籍喪失届をまだ出していなくても、外国籍を取得した時点で日本の旅券は使えません。効力を失った旅券を使うこと(行使)は、5年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、またはその両方の対象です(旅券法23条1項7号)。
外国の国籍を取った後に日本へ一時帰国するときは、その国の旅券で入国し、外国人として上陸の手続を受けます。滞在できる期間や査証(ビザ)の要否は、取得した国籍によって異なります。なお、二重国籍で日本国籍を持ち続けている人(出生による重国籍で国籍選択の期限内の人など)は日本国民なので、この失効の問題はありません。
日本国籍の再取得と帰化、永住権との違い
国籍法17条の届出で日本国籍を取得できるのは、二つの場合に限られます。一つは国籍留保をしなかったために日本国籍を失った人で、18歳未満で日本に住所がある場合です(17条1項)。法務省によると、届出先は住所地の法務局・地方法務局で、15歳以上は本人が出頭し、手数料はかかりません。日本に住所があるとは届出時に生活の本拠が日本にあることをいい、観光や親族訪問などの一時的な滞在は含みません。もう一つは、催告を受けて日本国籍を失った人が、無国籍であるか日本国籍の取得によって外国の国籍を失うことという条件(同法5条1項5号)を満たし、日本国籍を失ったことを知った時から1年以内に届け出る場合です(同条2項)。
自分の意思で外国籍を取って日本国籍を失った人には、17条の届出の道はなく、日本国籍に戻るには帰化の許可が必要です。帰化は原則として日本に5年以上住んでいることや18歳以上であること、生計を営めることなどが条件ですが、元日本人で日本に住所がある人については、法務大臣はこの3つの条件を満たさなくても帰化を許可できます(国籍法8条3号)。一方、原則として今の国籍を失うこと(同法5条1項5号)は必要です。申請は住所地の法務局・地方法務局に本人が出頭して行うため、海外に住んだままでは申請できません。帰化は官報に告示された日から効力を生じ、告示の日から1か月以内に帰化の届出をします(同法10条、戸籍法102条の2)。
永住権と国籍は別のものです。国籍法11条1項が定めるのは外国の「国籍」を取得した場合なので、米国のグリーンカードのような外国の永住権を得るだけなら、日本国籍は失いません。日本でも「永住者」は外国人のための在留資格の一つ(入管法別表第二)で、永住許可を受けても国籍は変わりません。永住権で長く暮らしたあと市民権を申請する段階で日本国籍を失う、という順番になることを覚えておきましょう。
- 移住先で市民権(国籍)を申請する前に、日本国籍を失うこと、日本の旅券が使えなくなること、日本に戻って住むには在留資格が必要になることを家族で確認する
- 未成年の子の分も申請する場合は、子についても同じ問題が起きないか、その国と日本の在外公館・法務局で確認する
- 出生で二重国籍の人は、自分の国籍選択の期限(2022年4月1日時点の年齢で決まる)を確かめる
- 海外で子が生まれたら、出生の日から3か月以内に国籍留保付きの出生届を出す
- 本ページは制度の一般的な説明です。個別の事情による判断は、法務局・地方法務局、在外公館、出入国在留管理庁に確認してください
よくある質問
Q. アメリカのグリーンカード(永住権)を取りました。日本国籍はなくなりますか?
A. なくなりません。国籍法11条1項で日本国籍を失うのは、自分の意思で外国の「国籍」を取得したときです。永住権はその国に住む資格で国籍ではないため、取得しただけでは日本国籍に影響しません。ただし、その後に米国の市民権を取得すると、その時点で日本国籍を失います。
Q. 外国の市民権を取りましたが、日本のパスポートの有効期間が残っています。一時帰国に使えますか?
A. 使えません。旅券法18条1項1号により、旅券は名義人が日本の国籍を失ったときに効力を失います。効力を失った旅券を使うと、5年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、またはその両方の対象になります(旅券法23条1項7号)。日本へは取得した国の旅券で外国人として入国します。
Q. 国籍喪失届を出さなければ、日本国籍は残りますか?
A. 残りません。法務省は、外国に帰化した場合などは自動的に日本国籍を失うと説明しています。国籍喪失届はその事実を戸籍に反映させる届出で、本人・配偶者・四親等内の親族が、事実を知った日から1か月以内(国外にいれば3か月以内)に出す義務があります(戸籍法103条)。正当な理由なく期間内に出さないと5万円以下の過料の対象です。
Q. 子どもが出生で日本とアメリカの国籍を持っています。いつまでに国籍を選べばよいですか?
A. 出生時から二重国籍の場合、2022年4月1日時点で18歳未満だった人は20歳に達するまでに選択します(国籍法14条1項)。同日時点で20歳以上だった人は改正前の22歳までのルールです。日本国籍を選ぶなら国籍選択届を市区町村役場か在外公館に出します(15歳未満は親が代わって手続)。期限を過ぎても選択の義務は残り、法務大臣の催告から1か月以内に日本国籍を選ばないと日本国籍を失うことがあります。
Q. 外国籍を取って日本国籍を失いましたが、将来は日本に戻って暮らしたいです。
A. まず在留資格が必要です。日本人の親から生まれた人は「日本人の配偶者等」(日本人の子として出生した者)に当たる場合があります。日本国籍に戻るには帰化の許可が必要で、元日本人で日本に住所がある人は、5年以上の居住・年齢・生計の条件を満たさなくても帰化が許可されることがあります(国籍法8条3号)。申請は住所地の法務局に本人が出頭して行います。
出典
本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、税務・法務の助言ではありません。個別の状況については税理士・税務署・年金事務所・市区町村などに確認してください。