海外移住オンライン海外移住 / ビザ / ノマド / 各国の税金

海外移住ガイド ›

国外転出時課税(出国税)とは?対象者・計算・納税猶予をわかりやすく解説(2026年)

最終確認: 2026-10(公的機関の情報をもとに作成)

国外転出時課税は、1億円以上の有価証券等を持つ人が日本の居住者でなくなるときに、売却していない株式などを売ったものとみなして含み益に所得税を課す制度です。出国前に納税管理人を届け出るかどうかで、申告期限や納税猶予を受けられるかが変わります。航空券代に上乗せされる国際観光旅客税とは別の制度なので、混同しないよう注意してください。

国外転出時課税制度の概要

国外転出時課税は、平成27年度税制改正で創設され、平成27年7月1日から施行されている制度です。根拠は所得税法第60条の2「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例」で、贈与や相続で国外に住む親族等に資産が移る場合は第60条の3「贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例」が適用されます。

ここでいう「国外転出」とは、国内に住所と居所のどちらも持たなくなることをいいます。対象となる人が国外転出をする時点で、持っている有価証券等をその時の価額で譲渡(または未決済の取引を決済)したものとみなし、含み益に所得税(復興特別所得税を含みます)が課税されます。実際に売却して現金が入るわけではないため、納税資金をどう用意するかが実務上の大きな論点になります。

一般に「出国税」と呼ばれる制度には、この国外転出時課税のほかに、出国1回ごとに航空券代などに上乗せされる国際観光旅客税があります。両者はまったく別の税です(違いは後述します)。

対象になる人と対象資産

国外転出をする居住者のうち、次の2つの要件をどちらも満たす人が対象です。

課税のタイミングと申告の期限

申告の期限と、含み益を計算する基準日は、国外転出の時までに税務署へ「納税管理人の届出」をしているかどうかで変わります。納税管理人は、本人に代わって日本で申告書の提出や納税などの手続を行う人です。

納税猶予(原則5年、延長で最長10年)と担保

一定の手続をすれば、国外転出時課税で納めることになった所得税は、国外転出の日から5年間納税を猶予できます。納期限は、納税猶予期間の満了日の翌日以後4か月を経過する日です(つまり国外転出から5年4か月後)。国外転出の日から5年を経過する日までに「納税猶予の期限延長届出書」を出せば、さらに5年延長でき、最長10年(納期限は10年4か月後)になります。

納税猶予を受けるための主な要件は次のとおりです。

帰国したときの取消し・値下がり時の減額・猶予期限後の扱い

国外転出時課税には、課税後の状況に応じて税額を取り消したり減額したりする仕組みがあります。いずれも期限内の更正の請求などが必要で、自動的には適用されません。

贈与・相続で国外の親族に資産が移る場合(所得税法60条の3)

本人が出国しなくても、1億円以上の対象資産を持つ居住者が、国外に住む親族等(非居住者)に対象資産を贈与したり、相続・遺贈で非居住者が対象資産を取得したりする場合も、同様の課税があります。対象者の要件は、贈与の時または相続開始の時に対象資産の合計が1億円以上であること、原則としてその日前10年以内に国内に5年を超えて住んでいたことです。

住民税の扱いとよくある間違い

国外転出時課税の対象は所得税(復興特別所得税を含む)です。地方税法第32条第2項・第313条第2項では、個人住民税の所得割の課税標準を計算する際、所得税法第60条の2から第60条の4までの規定の例によらないとされているため、国外転出時課税によるみなし譲渡益は住民税の所得割の計算には含まれません。

よくある間違いは次のとおりです。

もう一つの「出国税」:国際観光旅客税との違い

国際観光旅客税は、日本から船や飛行機で出国する旅客から出国1回ごとに徴収される国税で、平成31年(2019年)1月7日以降の出国から導入されました。日本人・外国人を問わず、資産額とも関係なく、原則として航空会社や船会社がチケット代金に上乗せする等の方法で徴収します。

税率は出国1回につき1,000円でしたが、令和8年度税制改正で3,000円に引き上げられ、2026年7月1日以降の出国から適用されています。ただし、2026年7月1日より前に締結された一定の運送契約(購入済みの航空券など)による同日以後の出国には、1,000円が適用されます。

2歳未満の人、航空機・船舶の乗員、入国後24時間以内に出国する乗継旅客などは非課税です。海外移住で出国するときに航空券で払うのはこちらの税で、国外転出時課税とは対象者も仕組みもまったく異なります。

本ページは制度の一般的な説明で、個別の税務アドバイスではありません。実際の判断や手続は、税理士または所轄の税務署にご相談ください。

よくある質問

Q. 預金と不動産が合わせて1億円以上ありますが、国外転出時課税の対象になりますか?

A. 対象資産は、有価証券(株式・投資信託など)、匿名組合契約の出資の持分、未決済の信用取引・発行日取引・デリバティブ取引です。1億円の判定はこれらの対象資産の合計で行い、預貯金や不動産は対象資産に含まれていません。

Q. NISA口座の株式や海外の証券口座の資産も1億円の判定に含めますか?

A. 含めます。国税庁のFAQでは、含み損がある有価証券、国外で所有している有価証券、NISA口座内の上場株式等のように譲渡益が非課税となるものも、1億円の判定に含めるとされています。

Q. 出国した後に納税管理人を届け出ても、納税猶予は受けられますか?

A. 原則として受けられません。納税猶予を受けるには、国外転出の時までに所轄税務署へ納税管理人の届出をし、確定申告期限までに担保を提供する必要があります。出国後に届け出て申告する場合は、国外転出の時の価額で申告しますが、原則として納税猶予の適用はありません。

Q. 数年で日本に戻る予定です。払った税金は戻りますか?

A. 国外転出の日から5年以内(納税猶予の期限延長をしている場合は10年以内)に帰国し、帰国の時まで持ち続けている対象資産については、課税を取り消せます。帰国の日から4か月以内に更正の請求または修正申告が必要です。

Q. 国外転出時課税で住民税もかかりますか?

A. 地方税法第32条第2項・第313条第2項により、個人住民税の所得割の計算では所得税法第60条の2から第60条の4までの規定の例によらないとされているため、国外転出時課税によるみなし譲渡益は住民税の所得割の計算に含まれません。

Q. 航空券に含まれている「出国税」とは同じものですか?

A. 別の税です。航空券などに上乗せされるのは国際観光旅客税で、日本から出国する旅客に出国1回ごとにかかります。2026年7月1日以降の出国から1回3,000円(同日より前に締結された一定の運送契約による出国は1,000円)です。国外転出時課税は、1億円以上の有価証券等を持つ人の含み益にかかる所得税です。

出典

本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、税務・法務の助言ではありません。個別の状況については税理士・税務署・年金事務所・市区町村などに確認してください。

関連ニュース

邦人、洪水エリアに置き去り。バンコク洪水に巻き込まれたタイ旅行ライターが体験したタイ人の本気の優しさ

タイ旅行ライター吉田彩緒莉(Yahoo!ニュース エキスパート)日本語

タイ旅行ライターの吉田彩緒莉さんは、2026年9月28日にタイ洪水に巻き込まれてスワンナプーム国際空港近くのラートクラバン通りに置き去りにされました。吉田さんは、ホテルまでの道が冠水して歩けずに困っていたところ、タイ人の女性に助けられ、彼女の家族のトラックに乗せてもらってホテルまで行くことができました。この経験から、吉田さんはタイ人の優しさを感じたと語っています。 詳細

自民PT、出国税引き上げを提言 観光公害対策に充当狙う

共同通信日本語

自民党のプロジェクトチームは23日、対策費捻出のため、国際観光旅客税(出国税)の引き上げを求める緊急提言をまとめた。現在、日本からの出国者1人に千円を課しているが、増額する方向で検討が進んでおり、政府の年末の税制改正に反映させたい考え。観光公害対策のために、出国税の引き上げが必要だと指摘した。 詳細

出国税、3千円引き上げが軸 政府与党、観光公害対策財源に

共同通信日本語

政府と与党は、出国税を3千円引き上げる方向で調整に入った。現行の3倍となる3千円が軸で、オーバーツーリズム対策の財源拡充が狙い。政府内にはパスポートの取得費軽減に充てる案も浮上。出国税は日本からの出国者1人につき千円を課すもので、2024年度の税収は過去最高の524億8千万円。 詳細

出国税、3千円に引き上げを 自民党の観光立国調査会が決議

共同通信日本語

自民党の観光立国調査会は、オーバーツーリズム対策などに充てるため、日本からの出国者1人につき千円を課している国際観光旅客税(出国税)を3千円に引き上げるべきだとする決議をまとめた。増額後の旅行需要などを踏まえ、ビジネスクラス以上の旅客は5千円とすることも提案。来年度中、速やかに3千円に上げるよう求めた。 詳細

出国税3千円以上で調整

共同通信日本語

政府と与党は、国際観光旅客税(出国税)を3千円以上に引き上げる方向で調整に入った。現行の3倍以上の水準となる見通しで、2026年度税制改正大綱に盛り込むことを目指す。 詳細

出国税3000円以上で調整 政府与党、観光公害対策に

共同通信日本語

政府と与党は、国際観光旅客税(出国税)を3千円以上に引き上げる方向で調整に入った。現行の3倍以上の水準となる。オーバーツーリズム対策の財源拡充が狙いで、2026年度税制改正大綱に盛り込むことを目指す。出国税は日本からの出国者1人につき千円を課しており、観光地での混雑やマナー違反などの対策の強化が課題となっている。 詳細

ほかのガイド

関連: 国別比較 / 国別ビザ・税制サマリー