海外移住で車を手放すときは、売却・譲渡(名義変更)、廃車(抹消登録)、輸出、日本に残すのいずれかを選び、出国前に運輸支局等や軽自動車検査協会での手続きを済ませるのが基本です。自動車税は抹消登録の翌月分から月割で戻りますが、軽自動車税は月割の還付がなく、自動車重量税は解体した場合に限って還付されます。自動車税・軽自動車税はいずれも4月1日時点の所有者に1年分かかるため、3月の手続きの遅れに注意してください。
出国前に決めること:売る・廃車にする・持っていく・残す
海外移住のときの車の扱いは、大きく分けて、売却・譲渡して名義を変える、廃車(抹消登録)にする、海外へ輸出して持っていく、日本に残すの4つです。登録自動車(普通車・小型車)の手続きは、使用の本拠の位置を管轄する運輸支局・自動車検査登録事務所(運輸支局等)で行い、軽自動車は軽自動車検査協会の事務所・支所で行います。国土交通省の自動車検査登録総合ポータルによると、登録自動車の手続きの一部は自動車保有関係手続のワンストップサービス(OSS)でインターネットから申請することもできます。
注意したいのは印鑑登録です。登録自動車の永久抹消登録や輸出抹消仮登録では、発行から3か月以内の所有者の印鑑(登録)証明書が必要です(国土交通省)。一方、東京都中央区の案内のとおり、転出届を出すと印鑑登録も抹消されます。海外転出届を出した後は日本の印鑑証明書を取れなくなるため、自分名義の車の手続きは住民票を抜く前に済ませるか、出国後に代わりに使える書類を運輸支局等に事前に確認しておくのが確実です。
- 売却・譲渡:買い手(新所有者)が移転登録をします。自動車税は4月1日時点の所有者に1年分かかり、年度途中の名義変更では月割の還付はありません
- 廃車:解体するなら永久抹消登録(軽自動車は解体返納)、いったん使用をやめるなら一時抹消登録(軽自動車は自動車検査証返納届)
- 輸出:登録自動車は輸出抹消仮登録、一時抹消済みの車や軽自動車は輸出予定届出証明書の交付を受けます
- 日本に残す:家族名義への変更、または本人名義のまま車検・自賠責・自動車税の納付を続け、納税管理人を定めます
売却・譲渡するとき(移転登録・名義変更)
道路運送車両法第13条により、登録自動車の所有者が変わったときは、新所有者がその日から15日以内に移転登録を申請しなければなりません。登録手数料は令和8年4月1日現在、窓口申請700円、OSS申請600円です(国土交通省の登録・検査手数料一覧表)。使用の本拠の位置が変わる場合は警察署長の保管場所証明(車庫証明)が必要で、ナンバーの管轄が変わればナンバープレート代もかかります。軽自動車の名義変更(自動車検査証記録事項の変更)は、軽自動車検査協会の案内では手数料無料です。
自動車税は、東京都主税局の案内では4月1日現在の車検証上の所有者に1年分が課税され、年度途中に移転登録しても前の所有者がその年度分を納めます。また、譲り受けた人が移転登録と自動車税事務所への申告をしないと、譲った人に引き続き課税されます。買取業者や知人に売った場合は、出国前に名義変更が済んだことを確認しておきましょう。運輸支局等で登録事項等証明書(現在証明は1通400円)を取れば、登録内容を確かめられます。
自賠責保険について、国土交通省の自賠責保険のQ&Aでは、車を譲渡する際は契約している損害保険会社の窓口で契約者変更(権利譲渡)の手続きが必要とされています。任意保険は車と一緒には移らないので、自分の契約は解約するか、後述の中断証明書を取ります。
廃車にするとき:永久抹消登録と一時抹消登録
車を解体する場合は、リサイクル法に基づく引取業者に車を引き渡し、解体が終わった連絡(解体報告記録)を受けてから永久抹消登録を申請します。道路運送車両法第15条により、解体報告記録がなされたことを知った日から15日以内に申請が必要です。申請書には解体報告記録がなされた日と移動報告番号を書き、車検証とナンバープレートを返納します。永久抹消登録の手数料は無料です。軽自動車では同じ手続きを「解体返納」と呼び、軽自動車検査協会の案内では手数料無料です。
一時抹消登録は、車を解体せずに使用を一時的にやめる手続きで、後で再登録して乗ることもできます。手数料は令和8年4月1日現在、窓口申請500円、OSS申請450円です。一時抹消登録をすると登録識別情報等通知書が交付され、後で解体したときの解体届出(手数料無料)や輸出の届出に使うので、なくさないようにします。軽自動車の場合は「自動車検査証返納届(一時使用中止)」で、自動車検査証返納証明書の交付手数料は1件450円です(軽自動車検査協会)。廃車手続きを業者に依頼した場合、抹消登録の日は業者に車を引き渡した日ではなく、運輸支局等で実際に抹消登録した日です(東京都主税局)。出国直前に引き渡すと、抹消が出国後になることがあります。
戻ってくるお金:自動車税の月割還付・重量税・自賠責、軽自動車税は還付なし
自動車税(令和8年4月1日に「自動車税種別割」から名称変更)は都道府県税で、地方税法第157条により、年度の途中で納税義務が消滅した場合は消滅した月まで月割で課税されます。東京都主税局の案内では、年度途中に抹消登録すると抹消登録した月の翌月分から月割で減額され、納付済みなら差額が還付されます。還付申請は不要で、抹消登録等が確認されてから1か月程度で通知が届きます。東京都では還付金が5万円以下ならゆうちょ銀行の振替払出証書、5万円超なら口座振込です。
軽自動車税は市町村税で、地方税法上の賦課期日は4月1日です。名古屋市の案内のとおり、軽自動車税には月割の制度がなく、年度の途中で廃車や譲渡をしても還付されません。4月2日以後に廃車しても、その年度分は全額納めます。廃車や名義変更の際は、軽自動車検査協会に隣接する窓口で軽自動車税の申告(税止め)も行います。
自動車重量税は車検のときに納めている国税で、自動車リサイクル法に基づいて解体された車について、永久抹消登録(軽自動車は解体返納・解体届出)と同時に還付申請をし、車検の残りが1か月以上ある場合に限り還付されます(国税庁タックスアンサーNo.7193、租税特別措置法第90条の15)。還付額は「納付された重量税額 × 車検残存期間 ÷ 車検有効期間」で、1か月未満の端数は切り捨てです。窓口提出から支払まではおおむね2か月半かかります。輸出する場合や、一時抹消登録をしただけで解体していない場合は対象になりません(一時抹消後に解体したときは、解体届出と同時に還付申請ができます)。
自賠責保険は、自動車損害賠償保障法施行規則第5条の2により、永久抹消登録・一時抹消登録・輸出抹消仮登録を受けた場合などに解約できます。国土交通省のQ&Aによると、解約は契約している損害保険会社の窓口で行い(代理店ではできません)、廃車した時点ではなく手続きをした時点で解約となります。保険期間の残りが1か月未満なら返戻保険料はありません。
車を海外へ持っていくとき:輸出抹消仮登録と輸出予定届出証明書
登録自動車を輸出するときは、輸出の予定日の6か月前から輸出する時までに輸出抹消仮登録を申請し、輸出抹消仮登録証明書の交付を受けます(道路運送車両法第15条の2、自動車登録規則第6条の5)。証明書の有効期間は輸出の予定日までで、手数料は500円です。国土交通大臣は予定日の経過後に税関に照会して輸出の事実を確認し、輸出抹消登録をします。予定日までに輸出しなかった場合は、有効期間が満了した日から15日以内に証明書を返納し、一時抹消登録をしたものとして扱われます。
すでに一時抹消登録をしている車を輸出する場合は、輸出予定日の6か月前から輸出予定届出証明書の交付を受けます(道路運送車両法第16条、手数料500円)。軽自動車も、軽自動車検査協会で「輸出予定届出証明書交付申請」(1件500円)をします。有効期間はいずれも輸出の予定日までで、届出の開始時期は軽自動車も予定日の6か月前です(道路運送車両法施行規則第40条の6)。
持ち込める車や手続きは相手国の法令で決まり、国ごとに大きく違います。例えばカナダ運輸省は、米国・メキシコ以外の国の基準で作られた車は原則として輸入できず、製造から15年以上の車などに限って認めるとしています。英国政府は、車を持ち込んだら14日以内にHMRCへ通知し、安全・環境基準の承認を受けてDVLAで登録・課税するよう求めています。輸送費や関税もかかるため、売却と比べて検討し、移住先の当局の情報を確認してください。
車を日本に残すとき:家族名義・車検・自動車税と納税管理人
数年で帰国する予定の人や、家族が車を使い続ける場合は、日本に残す選択もあります。家族が使うなら、家族を新所有者として移転登録しておくと、自動車税の納税通知書や車検、保険の手続きを家族が自分の名前で進められます。家族への名義変更でも、使用の本拠の位置が変われば車庫証明が必要です。
本人名義のまま残す場合、自動車税は毎年4月1日時点の所有者に課税され続けます。地方税法第151条により、自動車税の納税義務者が都道府県内に住所等を持たないときは納税管理人を定めます。東京都主税局は、海外赴任などで長期間住まいを離れる場合は都内か国内に住む人を納税管理人に定め、納税管理人申告書を出すよう案内しています。車を公道で使うなら車検と自賠責保険の契約も切らさないようにし(自動車損害賠償保障法第5条)、保管場所(車庫)も確保し続ける必要があります(自動車の保管場所の確保等に関する法律第3条)。しばらく誰も乗らないなら、一時抹消登録をしておく方法があります。自動車税は抹消の翌月分から課税されなくなり、自賠責保険も解約できます。ただし、帰国後に再び乗るには新規登録と新規検査(車検)が必要になります。
任意保険の中断証明書と、駐車場・車庫証明の後始末
任意の自動車保険を解約するときは、中断証明書を取っておくと、帰国後の新しい契約で前の契約の等級を引き継げる場合があります。日本損害保険協会によると、車の廃車・譲渡や契約者の海外渡航などで契約を中断する場合の制度で、一般的に解約日から13か月以内(または5年以内など)に手続きが必要です。申請には中断証明書発行依頼書、保険証券、抹消登録証明書など廃車・譲渡等が確認できる資料が求められます。発行の条件や有効期間は保険会社ごとの約款で決まります。海外渡航による中断について、出国日の翌日から10年間有効、中断前の等級が7等級以上であること、帰国後一定期間内に新しい契約を始めることなどの条件を設けている保険会社の例があります。解約前に、契約先に条件と必要書類(パスポートの出入国記録など)を確認してください。
月極駐車場は契約に解約予告期間が定められていることが多いので、車の引渡し日に合わせて早めに解約を申し出ます。車庫証明は使用の本拠の位置が変わる登録の際に新しい使用者側で取るものですが、保管場所の位置だけを変えたときは、変更した日から15日以内に新しい場所の警察署長へ届け出る必要があります(自動車の保管場所の確保等に関する法律第7条)。
- 2〜3か月前:売却・廃車・輸出・残すのどれにするか決め、買取や輸送の見積もりを取る
- 1〜2か月前:任意保険の中断証明書の条件を確認し、駐車場の解約を申し出る
- 転出届の前:印鑑証明書が必要な抹消登録などを済ませ、売却・譲渡の書類(譲渡証明書は実印を押印)もそろえる(3月は窓口が混雑)
- 抹消登録後:自賠責保険を保険会社の窓口で解約し、自動車税の還付通知の受取方法を決めておく
- 出国後:名義変更・抹消が済んだか、業者や家族に登録事項等証明書などで確認してもらう
よくある質問
Q. 3月に廃車すれば、翌年度の自動車税はかかりませんか?
A. 自動車税も軽自動車税も4月1日時点の所有者に1年分が課税されます。3月31日までに運輸支局等(軽自動車は軽自動車検査協会)で抹消登録や名義変更が完了していないと、翌年度分の納税通知書が届きます。業者に引き渡した日ではなく、実際に登録された日が基準なので、3月は早めに手続きを依頼してください。
Q. 軽自動車を夏に廃車しました。納めた軽自動車税は戻りますか?
A. 戻りません。軽自動車税は市町村税で、4月1日時点の所有者に1年分が課税され、月割の制度がないため、年度の途中で廃車や譲渡をしても還付されません。普通車などの自動車税(都道府県税)は、抹消登録した月の翌月分から月割で還付されます。
Q. 車を海外へ輸出した場合も、自動車重量税は還付されますか?
A. 還付されません。自動車重量税の廃車還付は、自動車リサイクル法に基づいて解体された車を対象に、永久抹消登録(軽自動車は解体返納・解体届出)と同時に申請した場合に限られ、車検の残りが1か月以上あることも条件です。なお、自賠責保険は輸出抹消仮登録を受ければ解約でき、残りの保険期間が1か月以上あれば返戻保険料を受け取れます。
Q. 出国した後に、家族に廃車手続きを頼むことはできますか?
A. 代理人による申請自体はできますが、登録自動車の永久抹消登録や輸出抹消仮登録には、発行から3か月以内の所有者の印鑑証明書と、実印を押した委任状が必要です。転出届を出すと印鑑登録も抹消されるため、出国前に印鑑証明書を用意するか、出国前に手続きを済ませるのが確実です。出国後に代わりの書類で手続きする場合は、管轄の運輸支局等に事前に確認してください。
Q. 海外にいる間、自動車保険の等級を残しておけますか?
A. 解約するときに中断証明書を取れば、帰国後の新しい契約に前の等級を引き継げる場合があります。日本損害保険協会によると、一般的に解約日から13か月以内(または5年以内など)に手続きが必要です。有効期間や等級の要件、帰国後いつまでに新しい契約を始めるかは保険会社の約款で異なるので、解約前に契約先に確認してください。
出典
本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、税務・法務の助言ではありません。個別の状況については税理士・税務署・年金事務所・市区町村などに確認してください。