海外に住所を移すと国民年金の強制加入の対象ではなくなりますが、日本国籍の人は20歳以上65歳未満の間、申し出れば任意加入できます。任意加入して保険料を納めた期間は老齢基礎年金の額に反映され、海外にいる間の障害や死亡にも障害基礎年金・遺族基礎年金で備えられます。加入しなくても海外在住期間は「カラ期間」として受給資格の判定には数えられますが、年金額は増えないため、その違いを数字で確認しておきましょう。
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海外在住中の国民年金の任意加入:保険料・納め方・カラ期間・損得の目安と帰国時の手続き(2026年)
最終確認: 2026-10(公的機関の情報をもとに作成)
海外在住者が任意加入できる人と申出先
日本年金機構は、海外に居住することになった人は国民年金の強制加入被保険者ではなくなるものの、日本国籍の人であれば任意加入できると案内しています。根拠は国民年金法附則第5条で、「日本国籍を有する者その他政令で定める者であって、日本国内に住所を有しない20歳以上65歳未満のもの」は、厚生労働大臣に申し出て被保険者になれると定めています。加入した人は「任意加入被保険者」と呼ばれます。
被保険者の資格は申出をした日に取得し、さかのぼって加入することはできません(国民年金法附則第5条第3項)。出国の時期と手続きの時期がずれると、その間は加入していない期間になります。また、保険料の納付月数が480月(40年)に達すると任意加入被保険者の資格を失うため、すでに40年分を納めている人は加入しても年金額は増えません。日本年金機構のパンフレットは、出国予定日以後の保険料をすでに納めている人も任意加入の手続きをしないと、後日その保険料は還付になると注意しています。
提出書類は「国民年金被保険者関係届書(申出書)」で、窓口は次のとおりです。国内協力者とは、国内にいる親族で、本人に代わって手続きや保険料の納付を行う人を指します。
- これから海外に転出する人:住んでいる市区町村の国民年金担当窓口
- すでに海外に住んでいて国内協力者がいる人:日本における最後の住所地の市区町村窓口
- すでに海外に住んでいて国内協力者がいない人:日本における最後の住所地を管轄する年金事務所
- 日本に住んだことがない人:千代田年金事務所
- 国内に住む人の任意加入(60歳以上65歳未満)は口座振替が原則ですが、日本年金機構は「外国に居住する日本人で、20歳以上65歳未満の方」をこの原則から除いています
保険料と納め方:国内口座からの引き落としか国内協力者による納付
任意加入被保険者の保険料は、国内の第1号被保険者と同じ月額17,920円(令和8年度)です。厚生労働省は令和9年度の保険料を月額18,290円と公表しています。納付期限は納付対象月の翌月末日です。日本年金機構の海外在住者向けの案内では、納め方として、日本国内に開設している預貯金口座からの引き落とし(口座振替)と、国内にいる親族等の協力者が本人に代わって納付書で納める方法の2つが挙げられています。クレジットカードなど他の方法を海外から使えるかは、手続きの窓口で確認してください。
口座振替では、まとめて前払いする前納で割引が受けられます。日本年金機構によると、令和8年度の口座振替の金額は2年前納417,150円(割引17,370円)、1年前納210,530円(割引4,510円)、6カ月前納106,300円(割引1,220円)、当月末振替(早割)17,860円(割引60円)です。一部のインターネット専業銀行では口座振替を利用できないため、出国前に引き落とし用の国内口座を確認しておきましょう。
任意加入被保険者は、保険料の免除・納付猶予や学生納付特例を申請できません。保険料を納めなかった月は年金額に反映されず、保険料を滞納したまま納付せずに2年が経過すると、海外在住の任意加入被保険者は資格を失います(国民年金法附則第5条第8項)。なお、国税庁によると国民年金保険料は社会保険料控除の対象ですが、所得税法第165条は非居住者の総合課税の計算で社会保険料控除の規定を除いているため、非居住者となった本人が日本の所得税で控除を受けることは原則としてできません。
任意加入した場合としない場合の老齢基礎年金の差
日本年金機構によると、20歳から60歳になるまでの40年間(480月)の保険料をすべて納めた場合の老齢基礎年金(満額)は、令和8年4月分から年額847,300円です(昭和31年4月2日以後生まれ。昭和31年4月1日以前生まれは844,900円)。厚生労働省の発表では月額70,608円にあたります。年金額は「847,300円×保険料納付月数÷480月」を基本とする式で計算されるため、任意加入して保険料を納めた月数に比例して増えます。
この式に当てはめると、保険料を1年(12月)納めるごとに老齢基礎年金は年額約21,180円、10年(120月)では年額約211,800円増えます(令和8年度の額による計算で、実際の額は毎年度改定されます)。一方、1年分の保険料は17,920円×12月で215,040円です。日本年金機構の任意加入のリーフレットは、5年間の保険料1,075,200円に対し、65歳から受け取ると5年間で約529,000円、75歳までの10年間で約1,059,000円の増額になり、75歳で納めた保険料の総額に見合う年金を受け取れると試算しています。
任意加入しなかった海外在住期間は、後で説明する合算対象期間(カラ期間)として受給資格の判定には数えられますが、年金額には反映されません。ただし、損得は受給開始の時期(繰上げ・繰下げ)、何歳まで受け取るか、今後の年金額と保険料の改定、居住国での年金の課税、為替などによって変わり、上の数字は一人ひとりの結果を示すものではありません。自分の加入記録は、ねんきんネットやねんきん定期便で確認できます。
カラ期間(合算対象期間)との関係
老齢基礎年金を受け取るには、保険料納付済期間と免除期間などを合わせた受給資格期間が10年以上必要です。日本年金機構の「合算対象期間」の案内では、昭和61年4月1日以降の期間のうち「日本人であって海外に居住していた期間のうち国民年金に任意加入しなかった期間」と「国民年金に任意加入したが保険料が未納となっている期間」が、いずれも20歳以上60歳未満の期間に限って合算対象期間とされています。合算対象期間は年金額には反映されませんが、10年の判定には数えられます。
さらに社会保障協定を結んだ国の年金加入期間は、協定の「年金加入期間の通算」により日本の加入期間とみなして受給資格を判定できます(英国・韓国・中国・イタリアとの協定は対象外)。日本年金機構の社会保障協定のQ&Aも、海外在住の日本人は任意加入しなくても合算対象期間などで10年以上あれば老齢年金を受けられる一方、年金額は実際の加入期間と納めた保険料に応じて計算されると説明しています。つまり、受給資格を確保するだけなら任意加入は必須ではなく、任意加入の意味は主に年金額の増加と障害・死亡への備えにあります。
障害基礎年金・遺族基礎年金の保障
日本年金機構は、任意加入して保険料を納めることで、海外在住期間に死亡したときや病気・けがで障害が残ったときに遺族基礎年金や障害基礎年金が支給されると案内しています。障害基礎年金を受けるには、障害の原因となった病気やけがの初診日が国民年金の加入期間中(20歳前、または日本国内に住む60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間を含む)にあることが必要です。海外に住み任意加入していない期間に初診日がある場合は、この要件を満たしません。
保険料の納付要件もあります。初診日(遺族基礎年金は死亡日)の前日において、保険料納付済期間と免除期間を合わせた期間が加入期間の3分の2以上あるか、令和18年3月末日までの特例として、65歳未満で前々月までの直近1年間に保険料の未納がないことが必要です。令和8年度の障害基礎年金は1級1,059,125円、2級847,300円(昭和31年4月2日以後生まれ)で、子の加算があります。遺族基礎年金は子のある配偶者または子が受け取り、子のある配偶者が受け取る場合は847,300円に子の加算額(2人目まで1人243,800円、3人目以降1人81,300円)を加えた額です。
なお遺族基礎年金は、被保険者でない人が亡くなった場合でも、保険料納付済期間・免除期間・合算対象期間などを合わせて25年以上ある人であれば対象になります。任意加入していないと海外在住中の保障がまったくないとは限りませんが、子のいない配偶者は遺族基礎年金の対象外で、障害基礎年金は初診日の要件があるため、居住国の制度や民間保険とあわせて備えを確認してください。
付加保険料・国民年金基金・iDeCoとの関係
65歳未満の任意加入被保険者は、月額400円の付加保険料を上乗せして納められます。付加年金額(年額)は「200円×付加保険料の納付月数」で、日本年金機構は2年以上受け取れば納めた付加保険料以上の年金を受け取れると説明しています。付加保険料を納めるには申出が必要で、納付は申出をした月の分からとなり、さかのぼることはできません。
国民年金基金は、国民年金法附則第5条第12項により、海外在住の任意加入被保険者も加入できます。国民年金基金連合会によると、海外に転居すると基金の加入員資格はいったん失いますが、国民年金に任意加入し3か月以内に基金の加入手続きをすれば従前の掛金で加入を続けられる特例があります。基金は途中で任意に脱退できず、基金の加入者は付加保険料を納めることができません。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、国民年金の任意加入被保険者であれば「第4号加入者」として掛金を出せます。iDeCoと付加保険料は併用できますが、iDeCoの拠出限度額の範囲内での調整が必要です。厚生労働省によると、第1号加入者のiDeCoと国民年金基金の共通の拠出限度額は2026年12月1日から月額7.5万円に引き上げられる予定です(現行の上限は月額6万8,000円)。任意加入をやめるとiDeCoの掛金も出せなくなる点に注意してください。
社会保障協定国に住む場合と、65歳以降の特例任意加入
日本年金機構によると、社会保障協定を結んだ国では原則として働く国の社会保障制度のみに加入し、協定相手国で現地採用された場合は相手国の制度に加入します(2025年12月1日のオーストリアとの協定発効で、協定発効国は24か国)。日本年金機構の社会保障協定のQ&Aは、海外に在住する日本国籍の20歳から65歳までの人は国民年金に任意加入できると案内しており、相手国の年金制度に加入している人を除く記載はありません。その場合は相手国の保険料と日本の保険料の両方を負担することになるため、通算で受給資格を満たせるかと合わせて検討してください。
会社員や公務員の被扶養配偶者が海外赴任に同行する場合などは、届出により第3号被保険者のままでいられる「海外特例要件」があり、この場合は任意加入の手続きは不要です。また、昭和50年4月1日以前に生まれた人は、65歳までに受給資格期間(10年)を満たせない場合、70歳までの間、受給資格期間を満たすまで特例的に任意加入できます。付加保険料を納められるのは65歳未満の任意加入被保険者に限られるため、65歳以降の特例任意加入では付加保険料は納められません。
帰国したとき・任意加入をやめるときの手続き
任意加入被保険者が帰国して日本国内に住所を有した(住民票に登録した)場合は、国民年金の強制加入被保険者になり、転入した市区町村での手続きが必要です。一時帰国などで短期間だけ住民票を戻した場合も、その期間は強制加入被保険者となり、その都度手続きが必要です。任意加入の際に付加保険料や口座振替を申し出ていた人が帰国後も続けたい場合は、強制加入の手続きの際に改めて申し出ます。
国民年金法附則第5条は、任意加入被保険者がいつでも申し出て資格を喪失できることと、65歳に達したとき、納付月数が480月に達したとき、日本国籍を失ったとき、60歳未満で被扶養配偶者になったとき、保険料を滞納して2年が経過したときなどに資格を失うことを定めています。やめる場合の手続き先は、加入したときの窓口に確認してください。国民年金基金やiDeCoに加入している人は、任意加入の資格を失うとそれらの加入資格にも影響するため、あわせて手続きします。
本ページは日本年金機構・厚生労働省などの公表資料をもとにした一般的な説明で、個別の判断を示すものではありません。加入するかどうかや手続きの詳細は、ねんきんダイヤルや年金事務所に確認してください。
よくある質問
Q. 海外に住んでいて国民年金に任意加入しないと、将来日本の年金はもらえませんか?
A. もらえる場合があります。日本国籍の人が20歳から60歳までの間に海外に住み任意加入しなかった期間は合算対象期間(カラ期間)となり、保険料を納めた期間などと合わせて10年以上あれば老齢基礎年金を受けられます。ただし合算対象期間は年金額には反映されません。
Q. 任意加入はさかのぼってできますか?
A. できません。国民年金法附則第5条第3項により、資格は申出をした日に取得します。出国前に住所地の市区町村で手続きするか、海外から最後の住所地の市区町村(国内協力者がいる場合)または年金事務所に申し出てください。
Q. 保険料はいくらで、海外からどう納めますか?
A. 令和8年度は月額17,920円です(令和9年度は18,290円と公表されています)。日本年金機構の案内では、日本国内の預貯金口座からの口座振替か、国内の協力者が本人に代わって納める方法があり、口座振替の2年前納(417,150円)などでは割引があります。
Q. 任意加入すると老齢基礎年金はどれくらい増えますか?
A. 令和8年度の満額は年額847,300円で、納付月数に比例します。1年分納めると年額約21,180円増える計算です(1年分の保険料は215,040円)。日本年金機構のリーフレットは、5年間加入した場合に75歳で納めた保険料の総額に見合う年金を受け取れると試算していますが、実際の損得は受給期間や年金額の改定、税などで変わります。
Q. 海外在住中に任意加入をやめたり、日本に帰国したりしたらどうなりますか?
A. 任意加入はいつでも申し出てやめられます。帰国して住民票を登録すると強制加入の被保険者になるため、転入先の市区町村で手続きします。一時帰国で短期間だけ住民票を戻した場合も手続きが必要で、付加保険料や口座振替を続けたい場合は改めて申し出ます。
出典
- 日本年金機構 国民年金の任意加入の手続き(日本の年金制度への継続加入)
- 日本年金機構 任意加入制度
- 日本年金機構 年金Q&A 海外に住んでいても国民年金に加入できますか。
- 日本年金機構 年金Q&A 海外に住むことになりますが、保険料はどのように納めるのですか。
- 日本年金機構 パンフレット「日本国外・国内へ出入国する方へ 国民年金の手続きが必要です!!」
- 日本年金機構 リーフレット「あなたも国民年金を増やしませんか?」(任意加入制度)
- 日本年金機構 国民年金保険料
- 日本年金機構 国民年金保険料の前納
- 日本年金機構 口座振替でのお支払い
- 日本年金機構 付加保険料の納付
- 日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
- 日本年金機構 合算対象期間
- 日本年金機構 障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額
- 日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
- 日本年金機構 社会保障協定
- 日本年金機構 日本から協定を結んでいる国で働く場合の加入すべき制度
- 日本年金機構 年金Q&A 日本人が海外に在住する場合は、国民年金に任意加入できるとのことですが、どのように手続きをすればよいのですか。
- 日本年金機構 年金Q&A 海外に在住する日本人は、国民年金に任意加入しないと、将来日本の老齢年金を受けられなくなってしまうのですか。
- 日本年金機構 従業員の家族が海外居住の場合の手続き(海外特例要件)
- 厚生労働省 令和8年度の年金額改定について
- 厚生労働省 2025年の制度改正(確定拠出年金)
- 国民年金基金連合会 加入条件・資格
- 国税庁 タックスアンサー No.1130 社会保険料控除
- e-Gov法令検索 国民年金法(附則第5条)
- e-Gov法令検索 所得税法(第165条)
本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、税務・法務の助言ではありません。個別の状況については税理士・税務署・年金事務所・市区町村などに確認してください。
- 2027年4月1日 日本、国民年金保険料が月額18,290円に(令和9年度)
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