海外で外国人と結婚した日本人は、現地で婚姻が成立しても、3か月以内に日本へ婚姻届(報告的届出)を出さなければ戸籍に反映されません。日本の戸籍には外国人配偶者の戸籍は作られず、日本人の戸籍に婚姻の事実が記載されるだけで、氏も自動的には変わりません。配偶者と日本に住むときの在留資格や、国外に住む配偶者の配偶者控除・年金の扱いまで、法務省・出入国在留管理庁・国税庁・日本年金機構の案内に沿って整理します。
国際結婚の手続きの全体像:どの国の法律で婚姻が成立するか
日本の法の適用に関する通則法24条は、婚姻の成立(年齢や重婚でないことなどの実質的な要件)は各当事者の本国法によるとし、婚姻の方式(届出や挙式などの形式)は婚姻を挙げた国の法によると定めています。さらに、当事者の一方の本国法に合った方式も有効とされますが、日本で婚姻を挙げる場合で当事者の一方が日本人のときは、日本の方式によらなければなりません。このため、海外在住の日本人が外国人と結婚する方法は、大きく分けて、住んでいる国(または相手の国)の方式で結婚してから日本に報告する方法と、日本の方式で先に婚姻届を出す方法の2つです。どちらの場合も、日本人側は日本の民法の要件(18歳以上であること、重婚でないことなど)を満たしている必要があり、相手の国の役所から日本の公的機関の「婚姻要件具備証明書」を求められることがあります。
- 外国の方式で結婚した場合:婚姻成立の日から3か月以内に、在外公館または本籍地へ婚姻届(報告的届出)を出す
- 日本の方式で結婚する場合:婚姻届が受理された日に婚姻が成立する(創設的届出)。相手の国での登録は別途必要
- 外国人配偶者の氏に変えたい場合:婚姻の日から6か月以内なら家庭裁判所の許可なしで届出ができる
- 配偶者が日本に住む場合:戸籍に婚姻が記載された後、在留資格「日本人の配偶者等」を申請する
外国の方式で結婚したとき:婚姻届は3か月以内(戸籍法41条の報告的届出)
戸籍法41条は、外国にいる日本人がその国の方式に従って婚姻などの証書を作らせたときは、3か月以内にその国に駐在する日本の大使・公使・領事に証書の謄本を提出しなければならないと定めています。法務省の戸籍Q&Aも、婚姻成立の日から3か月以内に、婚姻に関する証書の謄本(日本語訳が必要)を在外公館に提出するか、本籍地の市区町村役場に提出または郵送する必要があると案内しています。
この届出は、すでに外国で成立した婚姻を日本の戸籍に反映させるための「報告的届出」です。船橋市や大田区の案内では、外国で成立した婚姻を報告する婚姻届には証人の署名は不要で、千葉市は届出をするのは外国籍の方と婚姻する日本人としています。在外公館で受け付けた届書は外務省を経由して本籍地に送られ(戸籍法42条)、審査後に戸籍に記載されるため、戸籍に反映されるまでには時間がかかります。期限を過ぎた届出も市区町村は受理しなければなりませんが(戸籍法46条)、正当な理由なく期間内に届け出なかった人は5万円以下の過料の対象になります(戸籍法137条)。配偶者の在留資格の申請には婚姻が記載された戸籍謄本が必要になるので、早めに届け出ておくのが安全です。
- 婚姻届書(報告的届出の場合は相手の署名と証人は不要とする自治体の案内があります)
- 婚姻成立国の機関が発行した婚姻証明書(婚姻に関する証書の謄本)と日本語訳。法務省によると、翻訳者の氏名を書けば本人の翻訳でも構いません
- 外国人配偶者の国籍を証明する書面と日本語訳(千葉市などでは有効なパスポートの原本で代用できます)。婚姻証明書に相手の国籍や生年月日の記載がない場合は、出生証明書なども求められることがあります(大田区)
- 戸籍証明書:令和6年3月1日施行の改正戸籍法により、本籍地以外の市区町村に届け出る場合も添付は原則不要になりました(法務省)
- 在外公館に出す場合の部数や書式は在外公館ごとに案内があるため、提出前に確認してください
日本の方式で先に婚姻届を出す場合(創設的届出)
日本の方式による婚姻は、戸籍法の定めにより届け出て、それが受理されることで成立します(民法739条)。一時帰国中に日本の市区町村で届け出る場合は、夫または妻の本籍地か所在地の市区町村に、成年の証人2人が署名した婚姻届を出します。千葉市の案内では、外国籍の方については、本国の在日大使館・領事館などが発行する婚姻要件具備証明書と日本語訳、国籍証明書(有効なパスポートの原本で代用可)と日本語訳が必要です。
婚姻要件具備証明書を発行しない国の場合、法務省は、日本に駐在する本国の領事の前で宣誓し領事が署名した宣誓書や、本国法の写しとパスポート・出生証明書などを組み合わせて提出する方法を案内しています。必要書類は国によって異なるので、事前に届出先の市区町村に相談してください。注意したいのは、日本で成立した婚姻を市区町村が相手の国に通知する制度はないことです(千葉市)。相手の国や住んでいる国で婚姻を登録するには、自分たちでその国の在日大使館などに届け出る必要があり、その際に婚姻届の受理証明書や記載事項証明書を求められることがあります(船橋市)。
海外にいたまま日本の方式で婚姻する場合、外国にいる日本人同士なら在外公館に婚姻届を出せますが(民法741条)、この規定は日本人と外国人の婚姻には当たりません。日本人の本国法である日本の方式による婚姻は通則法24条3項により有効とされますが、届出先や成立日の扱い、住んでいる国で有効と認められるかは、本籍地の市区町村、在外公館、現地の当局に事前に確認してください。
婚姻要件具備証明書(独身証明)の取り方
婚姻要件具備証明書は、婚姻をしようとする人がその本国法上、婚姻に必要な要件を備えていることを証明する書面です。日本人が外国の方式で婚姻する場合、外国の関係機関から、日本の公的機関が発行した婚姻要件具備証明書の提出を求められることがあります(法務省)。法務省の戸籍Q&Aによると、日本人の婚姻要件具備証明書の取得先は、下に挙げる在外公館、本籍地の市区町村、法務局の3か所です。
東京法務局の案内では、法務局での請求は、外国の方式で婚姻しようとする日本国籍の本人に限られ、請求・受領とも本人の来庁が必要で、代理人や郵送は認められていません。請求書には相手方の氏名、性別、生年月日、国籍・地域、婚姻挙行地を書き、誤って請求した証明書は訂正できません。交付が翌日以降になる場合や、提出先の国によっては市区町村で交付を受けたものが認められない場合もあるとされています。
- 日本の在外公館(大使館・総領事館):外国語で発行。発行後3か月以内の戸籍謄抄本と、パスポートなどの身分証明書が必要(法務省)。海外在住者は通常ここで取得します
- 本籍地の市区町村:日本語で発行。運転免許証などの身分証明書が必要(法務省)
- 法務局・地方法務局:日本語で発行。戸籍謄抄本と身分証明書が必要(法務省)。出張所では発行していません(東京法務局)
- 日本語の証明書を外国で使う場合、提出先の国によっては外務省の証明(アポスティーユなど)や、その国の駐日大使館・領事館の認証が必要です。要否は提出先の国の在日大使館などに確認してください(法務省)
戸籍の記載・氏の変更(6か月以内)と子どもの国籍
日本人が外国人と婚姻しても、外国人配偶者の戸籍は作られず、日本人の戸籍に、外国人配偶者の氏名・生年月日・国籍と婚姻した事実が記載されます(法務省)。日本人が戸籍の筆頭者でない場合(親の戸籍にいる場合など)は、その日本人について新しい戸籍が作られます(戸籍法16条3項)。外国人と婚姻しても日本人の戸籍上の氏は変わりません。外国人配偶者の氏に変えたい場合は、婚姻の日から6か月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ずに氏の変更を届け出ることができます(戸籍法107条2項)。届出では変更後の氏の振り仮名も届け出ます。6か月を過ぎた場合は、家庭裁判所の許可を得たうえで届け出る必要があります(法務省)。船橋市などは、婚姻届と同時に出すこともできると案内しています。離婚や配偶者の死亡のあと元の氏に戻すときは、その日から3か月以内なら家庭裁判所の許可なしで届け出られます(同条3項)。
子どもは、出生の時に父または母が日本国民であれば日本国籍を取得します(国籍法2条)。ただし、国外で生まれて出生により外国籍も取得した子は、出生の日から3か月以内に出生届とともに国籍留保の届出をしないと、出生時にさかのぼって日本国籍を失います(国籍法12条、戸籍法104条)。父母の一方が外国籍で、子がその国籍も取得する場合も対象です。重国籍となった子は、原則として20歳になるまでにいずれかの国籍を選択する必要があります(法務省)。
配偶者と日本に住む:在留資格「日本人の配偶者等」の申請と審査
外国人配偶者が日本で暮らすには、在留資格「日本人の配偶者等」が一般的です。在留期間は5年、3年、1年または6月です(出入国在留管理庁)。海外から呼び寄せる場合は、在留資格認定証明書の交付を申請します。この申請は、日本に住む本人の親族が代理人としてすることができます(出入国管理及び難民認定法施行規則 別表第四)。夫婦で同時に帰国する場合などは、申請者や支弁者をどうするか事前に地方出入国在留管理官署に確認してください。
出入国在留管理庁が挙げる提出書類のうち、日本人配偶者の戸籍謄本は婚姻の記載があるものが必要で、記載がない場合は婚姻届出受理証明書も出します。日本で発行される証明書は原則として発行日から3か月以内のもので、外国語の書類には日本語訳を付けます。提出書類の構成からは、婚姻が法的に成立していることに加え、夫婦間の交流の実態と日本での生活費を支弁できることを書類で示す必要があることが分かります。書類がそろっていないと審査が大幅に遅れたり不利益処分となり得るとされ、審査の過程で追加資料を求められることもあります。
2026年10月1日から、在留資格の変更と在留期間の更新の手数料が、許可される在留期間に応じた額に改定されました(2026年9月30日までに受け付けた申請は改定前の額)。出入国在留管理庁の資料では、窓口申請の場合で1年は33,000円、3年以上5年未満は64,000円、5年以上は75,000円、オンライン申請の場合はそれぞれ27,000円、56,000円、65,000円です(オンラインは別途決済手数料)。
- 在留資格認定証明書交付申請書と写真
- 日本人配偶者の戸籍謄本(婚姻の記載があるもの)
- 申請人の国籍国の機関が発行した結婚証明書
- 日本での滞在費用を証明する資料:支弁者の住民税の課税(または非課税)証明書と納税証明書。入国後間もない場合や転居などで証明できない場合は、預貯金通帳の写しや日本の会社の雇用予定証明書・採用内定通知書など
- 日本人配偶者の身元保証書と、世帯全員の住民票の写し
- 質問書と、夫婦間の交流が確認できる資料(二人が写ったスナップ写真2〜3葉、SNSの記録、通話記録など)
離婚・死別したときの在留資格と届出
「日本人の配偶者等」で在留している人が日本人配偶者と離婚または死別したときは、14日以内に出入国在留管理庁長官に届け出なければなりません(入管法19条の16第3号)。届出は電子届出システム、地方出入国在留管理官署の窓口、郵送のいずれでもでき、届け出なかった場合は20万円以下の罰金に処されることがあります(出入国在留管理庁)。届出と同時に在留資格を変更する義務はありませんが、正当な理由なく配偶者としての活動を継続して6か月以上行わずに在留していると、在留資格の取消しの対象になります(入管法22条の4第1項7号)。出入国在留管理庁は、子の親権をめぐる離婚調停中や、日本人配偶者の有責性を争う離婚訴訟中などを正当な理由の例として挙げています。
この理由で在留資格を取り消そうとする場合、法務大臣は在留資格の変更や永住許可の申請の機会を与えるよう配慮しなければならないとされています(入管法22条の5)。出入国在留管理庁が公表している「定住者」への変更が認められた事例には、親権者として日本人の実子を監護・養育している例や、前配偶者の家庭内暴力が原因で婚姻が破綻した例があります。ただし判断は個別の事情による裁量で、類似の事例でも結論が異なることがあるとされています。
税金と年金:国外に住む配偶者の配偶者控除と第3号被保険者
日本に住所などがない非居住者が使える所得控除は、雑損控除、寄附金控除、基礎控除の3つだけなので、海外に住む日本人が日本で確定申告をしても配偶者控除は受けられません(国税庁 No.1100)。配偶者控除が問題になるのは、日本人が日本の居住者で、外国人配偶者が国外に住んでいる場合です。この場合、確定申告や年末調整で配偶者控除・配偶者特別控除を受けるには、親族関係書類と送金関係書類(外国語なら翻訳文も)の提出または提示が必要です(国税庁 No.1191、No.2672)。
親族関係書類は、戸籍の附票の写しなど日本の国・地方公共団体の書類と配偶者の旅券の写しの組み合わせか、外国政府などが発行した婚姻証明書などの書類です。送金関係書類は、金融機関による送金の書類やクレジットカードの家族カードの利用明細などで、その年に生活費などを必要の都度、配偶者本人に支払ったことを示すものです。国税庁のQ&Aでは、配偶者の送金額に下限はない一方、知人を通じた現金の手渡しや、個人名義が分からない共同名義口座への送金は送金関係書類にならないとしています。
年金では、令和2年4月1日以降、厚生年金の加入者(第2号被保険者)に扶養される配偶者が第3号被保険者になるには、日本国内に住所があることが要件です(国民年金法7条1項3号)。例外(海外特例要件)は、留学する学生、海外に赴任する第2号被保険者に同行する人、就労以外の目的で一時的に海外に渡航する人、海外赴任中に第2号被保険者と身分関係が生じた人(現地で結婚した場合など)などで、第2号被保険者の勤務先を経由して届け出ます(日本年金機構)。
- 日本の会社から海外に派遣されて厚生年金に加入したまま現地で外国人と結婚した場合は、婚姻証明書などを添えて海外特例要件の届出をすれば、配偶者が第3号被保険者・健康保険の被扶養者になれる可能性があります(20歳以上60歳未満であることや、年間収入130万円未満などの生計維持の要件もあります)
- 日本人が日本に戻って勤め、外国人配偶者が海外で働いている場合などは、原則として第3号被保険者になれません。海外特例に当たらず資格を失った人のうち、届出で国民年金に任意加入できるのは日本国籍の人です(日本年金機構)
- 外国人配偶者が日本に住所を持てば、20歳以上60歳未満の人は国籍にかかわらず国民年金の被保険者になります(国民年金法7条1項)
- 本ページは制度の一般的な説明です。個別の在留資格の見通しや税務の判断は、地方出入国在留管理官署・税務署・年金事務所や専門家に確認してください
よくある質問
Q. 外国で結婚して3か月を過ぎてしまいました。もう婚姻届は出せませんか?
A. 出せます。期間を過ぎた届出も市区町村は受理しなければならないと定められています(戸籍法46条)。ただし、正当な理由なく期間内に届け出なかった人は5万円以下の過料の対象になります(戸籍法137条)。在外公館か本籍地の市区町村に、できるだけ早く届け出てください。
Q. 外国人と結婚すると、私の名字は自動的に配偶者の姓に変わりますか?
A. 変わりません。外国人配偶者の氏に変えたい場合は、婚姻の日から6か月以内なら家庭裁判所の許可なしで氏の変更を届け出られます(戸籍法107条2項)。6か月を過ぎた場合は、家庭裁判所の許可を得たうえで届け出ます(法務省)。
Q. 外国人配偶者は日本の戸籍に載りますか?
A. 外国人配偶者の戸籍は作られません。日本人の戸籍に、外国人配偶者の氏名・生年月日・国籍と婚姻した事実が記載されます。日本人が親の戸籍に入っている場合は、その日本人について新しい戸籍が作られます(法務省、戸籍法16条3項)。
Q. 配偶者ビザ(日本人の配偶者等)の申請の前に、日本への婚姻届は済ませておく必要がありますか?
A. 出入国在留管理庁の提出書類には、婚姻の記載がある日本人配偶者の戸籍謄本が含まれています(記載がない場合は婚姻届出受理証明書も提出)。現地で結婚した場合は、まず日本への婚姻届を済ませておくと手続きが進めやすくなります。
Q. 日本で暮らす外国人配偶者と離婚したら、すぐに出国しなければなりませんか?
A. すぐに出国しなければならないわけではありません。離婚から14日以内に出入国在留管理庁へ届け出る必要があり、正当な理由なく配偶者としての活動を6か月以上行わずに在留していると在留資格の取消しの対象になります。日本での在留を続けたい場合は、事情に応じて「定住者」などへの在留資格の変更を早めに検討してください。
Q. 海外に住む外国人の妻(夫)を配偶者控除の対象にできますか?
A. 日本人本人が日本の居住者であれば、要件を満たせば対象にできます。その場合は、親族関係書類(外国の婚姻証明書など)と、その年に生活費などを送金したことを示す送金関係書類が必要です。本人が非居住者の場合は、配偶者控除は使えません(国税庁)。
出典
本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、税務・法務の助言ではありません。個別の状況については税理士・税務署・年金事務所・市区町村などに確認してください。