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国外財産調書・財産債務調書と税務調査の実務:提出義務・加算税・CRSで何が税務署に見えているか(2026年)

最終確認: 2026-10(公的機関の情報をもとに作成)

海外に資産を持つ人には、確定申告とは別に、国外財産調書や財産債務調書という「財産の一覧」を税務署へ提出する義務があります。税務署側には、本人が何もしなくても金融機関からの国外送金等調書や、外国の税務当局から届くCRS情報(令和6事務年度は101か国・地域から約275万件)が集まっており、海外投資等を行う個人への調査では1件当たり866万円の追徴が生じています。この記事では、調書の対象者・期限・記載方法から、提出しなかった場合の加算税と罰則、税務調査の流れ、海外在住者への調査の連絡先となる納税管理人、更正できる期間、非居住者になった後の扱いまでを整理します。

国外財産調書:対象者・期限・記載する財産と価額

国外財産調書は、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」(国外送金等調書法)第5条に基づく制度で、平成26年1月から施行されています。所得税法上の居住者(非永住者を除きます)で、その年の12月31日において価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を持つ人は、国外財産の種類・数量・価額・所在などを記載した国外財産調書を、翌年6月30日までに所轄税務署長へ提出しなければなりません。提出先は、所得税の納税義務がある人はその納税地、それ以外の人は住所地(国内に住所がなければ居所地)を所轄する税務署です。「国外財産調書合計表」の添付も必要で、e-Taxソフト(法定調書関係)からも提出できます。

居住者かどうかは、その年の12月31日の現況で判定します。非永住者とは、居住者のうち日本国籍を持たず、かつ過去10年以内に国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下の人をいいます。したがって、日本国籍を持つ日本の居住者は、海外に長く住んだ後に帰国した人も含め、ほぼ全員が対象になります。

記載する価額は、その年の12月31日における「時価」、または時価に準ずるものとして「見積価額」です。外貨建ての財産は、同日の外国為替の売買相場で円換算します。国税庁のFAQ(令和8年8月改訂)では、財産の種類ごとに見積価額の算定方法(例:預金は12月31日の残高、未決済の信用取引やデリバティブは12月31日に決済したとみなした利益または損失の額)が示されています。5,000万円の判定には含み損のある信用取引等やデリバティブ取引に係る権利も含め、価額がマイナスになる場合は他の財産と通算します。

「国外にある財産」かどうかは、財産の種類ごとに所在を判定します。主な判定基準は次のとおりです。

財産債務調書:対象者と令和5年分以後の見直し

財産債務調書は、国外財産調書法第6条の2に基づき、国内外を問わず持っている財産と債務の一覧を提出する制度です。令和4年度税制改正で見直され、令和5年分以後は提出義務者が拡充されるとともに、提出期限が翌年3月15日から翌年6月30日に後倒しされました(国外財産調書も同じく6月30日です)。対象者は次のいずれかに該当する人です。

提出しないとどうなるか:加算税の5%軽減・加重、罰則、提出状況の統計

国外財産調書は、本人に自分の海外資産を申告させる仕組みであるため、提出を促すための「アメとムチ」が用意されています。国外財産調書法第6条の加算税の特例と第10条の罰則です。

本人の手続なしに税務署へ届く情報:国外送金等調書とCRS

税務署は、納税者が出す調書だけに頼っているわけではありません。海外とのお金の動きや海外口座の残高は、金融機関や外国の税務当局から自動的に届いています。

国外送金等調書:国外送金等調書法第4条により、金融機関(資金移動業者を含みます)は、顧客が行った100万円を超える国外送金と国外からの送金の受領について、顧客の氏名・住所、金額、告知書に記載された送金原因などを記載した国外送金等調書を、為替取引を行った日の属する月の翌月末日までに税務署長へ提出します。100万円の基準は同法施行令第8条で定められています。提出するのは金融機関であり、送金者本人が税務署に対して行う手続はありませんが、送金時に金融機関へ提出する告知書(マイナンバーの記載が必要です)の内容がそのまま税務署に伝わります。ステーブルコインなどの電子決済手段を国外へ移転する取引についても、100万円超のものは国外電子決済手段移転等調書の対象です(施行令第9条の9)。

CRS(共通報告基準):OECDが策定した、非居住者の金融口座情報を税務当局間で自動的に交換する国際基準です。日本では平成29年1月1日以後に金融機関で口座を開設する人は居住地国等を記載した届出書を提出し、金融機関は平成30年以後、毎年4月30日までに非居住者の口座情報を所轄税務署長に報告しています。報告・交換される情報は、口座保有者の氏名・住所、居住地国、外国の納税者番号、口座残高、利子・配当等の年間受取総額などです。対象となる口座は、銀行の預金口座、証券会社の保管口座、生命保険会社のキャッシュバリュー保険契約・年金保険契約、信託の受益権などに及びます。海外の金融機関にある日本居住者の口座情報は、同じ仕組みで相手国から国税庁へ送られます。

国税庁が令和8年1月に公表した「令和6事務年度 租税条約等に基づく情報交換事績の概要」によると、受領状況は次のとおりです。

海外資産・海外取引に関する税務調査の実態(令和6事務年度)

国税庁は毎年、7月から翌年6月までの「事務年度」ごとに所得税の調査状況を公表しています。最新の「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表、対象期間は令和6年7月から令和7年6月)では、所得税の「調査等」(実地調査と簡易な接触の合計)は73万6千件(前事務年度60万5千件)、追徴税額の合計は1,431億円(同1,398億円)で過去最高となりました。実地調査は4万7千件で、1件当たりの追徴税額は241万円、高額・悪質な事案を対象とする特別調査・一般調査に限ると1件当たりの申告漏れ所得金額は1,486万円、追徴税額は299万円です。

海外に関係する調査のトピックスとして、国税庁は「富裕層」と「海外投資等を行っている個人」の数字を公表しています。国税庁は、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人に対し、国外送金等調書、租税条約等に基づく情報交換制度、CRS情報などを効果的に活用して積極的に調査を実施していると明記しています。

税務調査の流れと海外在住者への調査:事前通知・質問検査権・納税管理人

税務調査の手続は国税通則法第7章の2(第74条の2以下)に定められ、国税庁は「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」(令和8年7月改訂)で運用を説明しています。実務上の流れは次のとおりです。

更正の期間制限(5年・7年・情報交換要請で3年延長)と修正申告の加算税

税務署が更正や決定を行える期間には制限があります(国税通則法第70条)。原則は法定申告期限から5年で、偽りその他不正の行為により税額を免れた場合は7年です。国外転出時課税(所得税法第60条の2・第60条の3)の適用がある所得税については、納税管理人の届出や税理士の税務代理権限証書の提出などがない場合は7年とされています(第70条第5項第3号)。

海外取引・海外資産については、さらに期間が延びる特例があります(第71条第1項第4号)。調査担当者が納税者に国外取引(非居住者や外国法人との取引など)または国外財産に関する書類の提示・提出を求め、求めた日から60日を超えない範囲で指定した日までに提示・提出がなかった場合(責めに帰すべき事由がない場合を除きます)で、国税庁長官が租税条約等の相手国にその国外取引・国外財産の情報提供を要請し(要請した旨は3か月以内に納税者へ通知されます)、相手国から提供された情報に照らして非違があると認められるときは、通常の期間を過ぎていても、要請書面が発せられた日から3年間は更正決定等ができます。ただし、通常の期間制限が満了する日の6か月前以後に行われた要請は対象外です。海外資産に関する資料の提示を求められたときに応じないと、調査の期間が実質的に延びることになります。

修正申告や期限後申告をしたときの加算税(国税通則法第65条・第66条・第68条、国税庁タックスアンサーNo.2024・No.2026)は、申告するタイミングで大きく変わります。

よくある質問

Q. 海外に移住して非居住者になりました。国外財産調書は今後も出す必要がありますか?

A. 国外財産調書の対象は、その年の12月31日の現況で判定した所得税法上の居住者(非永住者を除く)です。12月31日に非居住者であれば、その年分の調書を提出する義務はありません。また、提出期限(翌年6月30日)までに納税管理人の届出をしないで出国した場合は、出国前年分の調書も提出を要しません。帰国して再び居住者になった年の12月31日に国外財産が5,000万円を超えていれば、翌年6月30日までに提出が必要です。

Q. 納税管理人を届け出て出国する場合、出国する年と前年分の調書はどうなりますか?

A. 国外財産調書の提出義務が免除されるのは、納税管理人の届出をしないで国内に住所も居所も持たなくなった場合です。納税管理人を届け出て出国する場合は、前年の12月31日に5,000万円を超える国外財産があれば、前年分の国外財産調書を6月30日までに納税管理人を通じて提出する必要があります。出国した年については、その年の12月31日に非居住者であるため国外財産調書の対象外です。

Q. 海外の暗号資産取引所に置いている暗号資産は国外財産調書に書きますか?

A. 書きません。国税庁のFAQ(問36・問37)では、暗号資産やNFTは財産を持つ人の住所(住所がなければ居所)の所在で「国外にある」かどうかを判定するとされており、日本の居住者が国外の取引所やマーケットプレイスで保有する暗号資産・NFTは国外財産に当たらないため、国外財産調書の記載対象になりません。ただし財産債務調書の対象者であれば、暗号資産は財産として財産債務調書に記載が必要です。暗号資産の売却益などの所得税の申告義務は別に残ります。

Q. 国外財産調書と財産債務調書の両方の要件を満たします。同じ財産を二重に書くのですか?

A. 両方の調書を提出する必要がありますが、国外財産調書を提出する人は、財産債務調書には国外財産に係る事項(価額を除く)を記載しなくてよいとされています。財産債務調書と財産債務調書合計表には「国外財産調書に記載した国外財産の価額の合計額」と「うち国外転出特例対象財産の価額の合計額」を記載し、国外にある債務は財産債務調書に記載します。

Q. 100万円を超える海外送金をすると税務署に知られますか。自分で何か届け出る必要はありますか?

A. 100万円を超える国外送金と国外からの送金の受領については、金融機関(資金移動業者を含む)が国外送金等調書を翌月末日までに税務署へ提出します。本人が税務署に届け出る手続はありませんが、送金時に金融機関へ提出する告知書に記載した送金原因や氏名・住所・マイナンバーが税務署に伝わります。国税庁は国外送金等調書をCRS情報や国外財産調書と突き合わせて、海外不動産の賃料収入などの申告漏れを把握しています。

Q. 税務調査は何年前まで遡りますか。自主的に修正申告すると加算税はどうなりますか?

A. 更正や決定ができるのは原則として法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為がある場合は7年です。国外取引や国外財産に関する書類の提示を求められて60日以内の指定日までに出さず、国税庁が租税条約に基づき相手国に情報を要請した場合は、要請から3年間は更正等ができ、実質的に延長されます。加算税は、調査の事前通知前に自主的に修正申告すれば過少申告加算税はかからず、調査通知後・更正予知前なら5%(50万円等を超える部分は10%)、調査後なら10%(同15%)です。無申告の場合は調査通知前の自主的な期限後申告なら5%、調査後なら15%・20%・30%で、国外財産調書の提出状況によりさらに5%軽減または加重されます。

出典

本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、税務・法務の助言ではありません。個別の状況については税理士・税務署・年金事務所・市区町村などに確認してください。

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