海外に住んでいても、日本の親族が亡くなれば日本の民法に従って相続人になり、相続放棄の3か月や相続登記の3年といった期限も同じように進みます。海外在住者は印鑑証明や住民票を取れず、家庭裁判所や法務局の窓口にも行きにくいため、郵送・署名証明・国内の代理人を組み合わせて進めるのが基本です。このガイドでは、裁判所・法務省・法務局・国税庁の案内とe-Gov法令で確認できる範囲で、手続の順番と海外在住者ならではの注意点をまとめます。
まず期限を把握する:3か月・4か月・10か月・3年
相続の手続には法律で決まった期限がいくつもあり、海外にいても延びるわけではありません。特に最初の3か月は、借金も含めて相続するか(単純承認)、一切相続しないか(相続放棄)、プラスの財産の範囲で債務を引き継ぐか(限定承認)を決める「熟慮期間」で、何もしないまま過ぎると単純承認したものとみなされます(民法第915条、第921条第2号)。
期限の多くは「死亡の日」ではなく「相続の開始があったことを知った日」から数えます。海外にいて訃報を受けるのが遅れた場合でも、知った日から起算されるのが原則です。主な期限は次のとおりです。
- 3か月以内:相続放棄・限定承認の申述、または熟慮期間の伸長の申立て(家庭裁判所、民法第915条)
- 4か月以内:亡くなった人の所得税の準確定申告(相続の開始があったことを知った日の翌日から、国税庁)
- 10か月以内:相続税の申告と納税(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から、国税庁)。遺産が基礎控除額以下なら不要です
- 3年以内:不動産を取得したことを知った日からの相続登記(不動産登記法第76条の2)
- 10年:相続開始から10年を過ぎた遺産分割では、原則として特別受益や寄与分を考慮した具体的相続分ではなく、法定相続分などで分けることになります(民法第904条の3。法務省は早期の遺産分割を促すルールとして2023年4月1日から開始と案内)
- 遅滞なく:自筆の遺言書が見つかったときの家庭裁判所への検認の請求(民法第1004条)
相続放棄・限定承認:申述先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
相続放棄と限定承認は、家庭裁判所に申述しなければ効力がありません(民法第938条、第924条)。親族に「放棄する」と伝えたり、遺産分割協議で何も受け取らないことにしたりするだけでは、家庭裁判所の相続放棄にはならず、債権者に対して債務を免れることはできません。相続放棄が受理されると、その相続については初めから相続人でなかったものとみなされます(第939条)。
裁判所の案内では、申述先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所で(家事事件手続法第201条は「相続が開始した地」と定め、民法第883条により相続は被相続人の住所で開始します)、相続人の住所地ではありません。費用は申述人1人につき収入印紙800円分と、裁判所ごとに異なる連絡用の郵便切手です。必要書類は、申述書、被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本、被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本などで、相続の順位によって追加があります。戸籍等に代えて法定相続情報一覧図の写しを出せる場合もあり、申述前に入手できない戸籍は後から追加提出してもよいとされています。
限定承認は、相続人全員が共同して申述しなければならず(第923条)、相続財産の目録を作って家庭裁判所に提出します(第924条)。相続人の一部が海外にいる場合は全員の足並みをそろえるだけで時間がかかるため、早めに方針を話し合う必要があります。受理後は官報公告などの清算手続が続き(裁判所Q&Aでは限定承認者は5日以内、相続人が複数で選任された相続財産清算人は選任後10日以内に公告)、手続の負担は相続放棄よりかなり重くなります。
- 海外からの郵送:千葉家庭裁判所の案内は、申述書を郵送する場合は3か月以内に裁判所に到着するよう余裕をもって提出し、3か月以内に受け付けられていれば受理の日が3か月を過ぎても問題ないとしています。国際郵便の日数を見込み、追跡できる方法で送るのが安全です
- 裁判所からの照会:裁判所は申述書の記入例で、判断のため書面で照会したり事情を尋ねたりすることがあり、照会には必ず応じるよう求めています。海外の住所や連絡先(メールアドレス・電話番号)をはっきり書いておきましょう
- 死亡から3か月を過ぎて申述する場合:大阪家庭裁判所は、相続の開始を知った日を明らかにする書面(債権者等からの通知書の写しなど)が必要になることがあると案内しています。訃報のメールや手紙も保管しておきます
- 受理の証明:債権者や金融機関に示す「相続放棄申述受理証明書」は、1通150円分の収入印紙と、郵送の場合は返信用の切手を添えて受理した家庭裁判所に申請します(裁判所Q&A)
- 署名や押印の扱い、海外在住者の本人確認書類として何を添えるかは、裁判所の全国共通の案内には書かれていないため、申述先の家庭裁判所に事前に確認してください
3か月で決められないとき:熟慮期間の伸長と、放棄前にしてはいけないこと
海外にいて財産や借金の調査が間に合わない場合は、3か月の期間内に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を家庭裁判所に申し立てられます(民法第915条第1項ただし書)。申立人は相続人を含む利害関係人と検察官、申立先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所、費用は相続人1人につき収入印紙800円分と郵便切手です。申立て自体も3か月以内にする必要があり、伸ばす期間は家庭裁判所が判断します。申立てを却下する審判には即時抗告ができます(家事事件手続法第201条第9項)。
裁判所Q&Aによれば、3か月は相続人が「被相続人が亡くなったこと」と「それによって自分が相続人になったこと」を知った時から数えます。相続財産が全くないと信じ、そう信じたことに相当な理由がある場合などは、財産の存在を知った時から3か月以内であれば受理されることもあるとされていますが、例外的な扱いなので、期限内に申述または伸長の申立てをするのが基本です。
相続財産の全部または一部を処分すると、その時点で単純承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなります(民法第921条第1号。保存行為などは除かれます)。放棄や限定承認をした後でも、財産を隠したり勝手に使ったりすると同様です(同条第3号)。放棄を考えているうちは、亡くなった人の預金を引き出して使う、不動産や車を売る・名義を変えるといった行為は避け、判断に迷う支出は弁護士に相談してから行ってください。
なお、亡くなった人自身も海外に住んでいた場合は、日本の家庭裁判所がそもそも管轄権を持つかが問題になります。家事事件手続法第3条の11は、相続開始時の被相続人の住所が日本国内にある場合などに日本の裁判所の管轄権を認めており、日本に最後に住所を有した後に外国に住所を移していた場合は除かれています。このようなケースは日本と居住国の両方の専門家に確認してください。
遺言書があるとき:家庭裁判所の検認と、検認がいらない遺言
実家などで自筆の遺言書が見つかった場合、保管者または発見した相続人は、相続の開始を知った後、遅滞なく遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に提出して検認を請求しなければなりません(民法第1004条第1項)。封印のある遺言書は家庭裁判所で相続人等の立会いのもとでしか開封できず、検認を経ずに遺言を執行したり家庭裁判所外で開封したりすると5万円以下の過料の対象です(第1004条第3項、第1005条)。公正証書遺言と、法務局で保管されている自筆証書遺言(遺言書情報証明書が交付されるもの)は検認がいりません。
裁判所の案内では、検認は遺言の存在と内容を相続人に知らせ、偽造・変造を防ぐための手続で、遺言の有効・無効を判断するものではありません。申立てには遺言書1通につき収入印紙800円分と郵便切手、遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本などが必要です。裁判所は相続人に検認期日を通知しますが、申立人以外の相続人が出席するかどうかは各人の判断で、全員がそろわなくても検認は行われます。海外にいる相続人が欠席しても手続は進むということです。
遺言を執行するには検認済証明書が必要で、遺言書1通につき150円分の収入印紙で申請します。金融機関の相続手続でも、公正証書遺言以外の場合は検認調書または検認済証明書の提出を求められます(全国銀行協会)。海外在住の相続人が遺言書を保管している場合は、自分で開封せずに、申立てを国内の弁護士に依頼するか、一時帰国の日程を見て家庭裁判所に相談してください。
遺産分割協議書:印鑑証明の代わりに署名証明、住民票の代わりに在留証明
遺言がなければ、相続人全員で遺産の分け方を話し合います(民法第907条)。海外在住の相続人がいる場合は、メールや電話で内容を合意したうえで、協議書に全員が署名する形で進めるのが一般的です。話し合いがまとまらないときは家庭裁判所の遺産分割調停を利用でき、申立先は相手方のうち1人の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所、費用は被相続人1人につき収入印紙1,200円分と郵便切手です(裁判所)。
遺産分割協議書は、不動産登記や預金の払戻しで実印の押印と印鑑証明書の添付を求められるのが一般的です。しかし海外転出をすると印鑑登録は抹消されるため(板橋区など自治体の案内では、区外への転出の日をもって登録が抹消されます)、海外在住者は印鑑証明書を取れません。法務省は、不動産登記で本人が外国に住んでいて印鑑証明書を取得できない場合、日本の領事が作成した署名証明を代わりに添付することを認め、在外公館から遠いなどで取得が難しいときは外国の公証人が作成した署名証明でもよいとしています。署名は日本文字でもローマ字でも、両方を併記してもよいとする先例も示されています。
- 署名証明は在外公館(日本大使館・総領事館)で、本人が出向いて領事の面前で署名します。日本から届いた協議書に署名して証明書と綴り合わせる形式と、署名だけを単独で証明する形式があり、どちらが必要かは法務局や金融機関など提出先が決めるので、事前に確認してから予約します。協議書には事前に署名しないで持参します
- 住所の証明が必要な場面(相続登記で不動産を取得する人の住所証明、法定相続情報一覧図に住所を載せる場合など)では、住民票の写しの代わりに在外公館が発行する在留証明を使うのが一般的です。発給要件・手数料・日数は公館ごとに違うため、管轄の公館の案内を確認してください
- 登記以外の手続(銀行・証券会社など)で外国の公証人の署名証明を受け付けるかは、提出先ごとの判断です
- 協議書は相続人の人数分を作り、海外の相続人の署名分を国際郵便でやり取りするため、往復の日数と在外公館の予約状況を見込んで日程を組みます
預金の相続と仮払い制度、法定相続情報証明制度
全国銀行協会の案内では、預金の相続は、金融機関への連絡、必要書類の準備、金融機関所定の相続手続書類の提出、払戻しの順に進みます。連絡と同時に亡くなった人の口座の入出金は原則として制限されます。必要書類は、遺言書があるか、遺産分割協議書があるか、家庭裁判所の調停調書・審判書があるかで変わり、遺産分割協議書がある場合は、協議書(法定相続人全員の署名・捺印があるもの)、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等、相続人全員の戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書が概ね必要です。海外在住の相続人の印鑑証明書に代わる書類や、払戻金を海外の口座に送金できるかは金融機関ごとに扱いが違うので、口座のある金融機関ごとに確認してください。投資信託など預金以外の相続手続は別になります。
遺産分割がまとまる前でも、各相続人は、相続開始時の預貯金額の3分の1に自分の法定相続分を掛けた額まで、単独で払戻しを受けられます(民法第909条の2)。上限は同一の金融機関ごとに150万円です(法務省令)。法務省の例では、600万円の預金で法定相続分が2分の1の相続人は100万円です。払い戻した分は遺産の一部分割で取得したものとみなされるため、相続放棄を考えている人は利用する前に専門家に相談してください。
法定相続情報証明制度は、戸籍謄本の束と相続関係の一覧図を登記所(法務局)に出すと、認証文付きの一覧図の写しを無料で交付してもらえる制度です。相続登記、預金の払戻し、相続税の申告などで戸籍の束の代わりに使えます(使えるかは提出先に確認)。家庭裁判所の相続放棄や検認でも、戸籍等に代えて提出できる場合があります。
- 申出ができるのは被相続人の相続人(またはその相続人)で、法務局の案内に申出人の住所要件は書かれていません。海外在住の相続人も申出人になれますが、申出先は被相続人の死亡時の本籍地、最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地を管轄する登記所から選ぶため、海外在住者は「申出人の住所地」以外から選ぶことになります
- 申出と交付は郵送でもでき、代理は親族のほか弁護士・司法書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・行政書士に依頼できます
- 申出人の氏名・住所を確認する書類として法務局が例示するのは、運転免許証やマイナンバーカードのコピー、住民票記載事項証明書などで、それ以外の書類は登記所に確認するよう案内されています。海外在住者は在留証明などが使えるか、事前に登記所に確認してください
- 日本国籍を有しないなど戸除籍謄本を提出できない人がいる場合は利用できません。一覧図は5年間保管され、再交付を受けられるのは当初の申出人だけです
- 戸籍を本籍地以外の窓口で取れる広域交付(2024年3月1日開始)は窓口だけの手続で、郵送や代理人による請求はできません(法務省)。海外からは本籍地の市区町村への郵送請求か、国内の家族・専門家への依頼になります
相続登記と、国内の家族・司法書士・弁護士に頼むときの委任状
不動産を相続で取得した人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です(不動産登記法第76条の2、第164条)。2024年4月1日から義務化され、それより前の相続で登記していない不動産は2027年3月31日までに登記が必要と法務省は案内しています。遺産分割がまとまらないときは、3年以内に自分が相続人である旨を申し出る相続人申告登記で、申請義務を履行したものとみなされます(第76条の3)。ただし相続人申告登記では売却などはできません。2024年4月1日以降、海外居住者を所有権の登記名義人とする登記の申請では、国内における連絡先となる者(いない場合はその旨の上申書)も申請情報に含めることになったため(法務省)、海外在住者の相続登記は司法書士に依頼するのが現実的です。
海外在住の相続人が国内の誰かに手続を頼む場合、手続ごとに頼める人が異なります。委任状には、印鑑証明書の代わりに在外公館の署名証明を付けるのが基本で、法務省が示す先例でも、委任状や遺産分割協議書などに添付する本人の署名証明が対象として挙げられています。
- 家庭裁判所の手続(相続放棄・限定承認・伸長・検認・遺産分割調停):法令で認められた代理人のほかは弁護士でなければ手続代理人になれず、弁護士でない人は家庭裁判所の許可が必要です(家事事件手続法第22条)。国内の家族は、本人が作成・署名した申述書や戸籍をそろえて提出する手助けはできますが、許可なく手続代理人になることはできません
- 相続登記:司法書士に、署名証明付きの委任状と遺産分割協議書、在留証明などを送って代理申請してもらうのが一般的です。相続人全員が海外にいても依頼できます
- 法定相続情報一覧図:親族と、弁護士・司法書士・税理士・行政書士などの資格者が代理できます。親族が代理する場合は親族関係が分かる戸籍謄本、資格者の場合は身分証明書の写し等と委任状が必要です(法務局)
- 預金:代理人による手続を認めるか、必要な委任状の書式や署名証明の要否は金融機関ごとに異なります
- 相続税の申告:日本に住所がない相続人は、申告書の提出などを任せる納税管理人(国内に住所のある人)を定めます(次の節)
税金の期限は要点だけ:準確定申告4か月、相続税10か月、納税管理人
亡くなった人に確定申告が必要な所得があった場合、相続人は1月1日から死亡日までの所得について、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に準確定申告と納税をします(国税庁)。相続人が2人以上いれば連署で提出するか、他の相続人の氏名を付記して各人が別々に提出します。申告書には各相続人の氏名・住所・続柄などを書いた付表を添付し、被相続人の死亡当時の納税地の税務署長に提出します。還付金の受領を相続人の代表者などに委任する場合は、付表とは別に委任状が必要です。
相続税は、取得した財産の合計額が遺産に係る基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数。相続税法第15条)を超える場合に、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納税します(国税庁)。提出先は、被相続人の死亡時の住所が日本国内なら被相続人の住所地を所轄する税務署で、相続人の住所地の税務署ではありません。e-Taxや郵送でも提出できます。基礎控除の「法定相続人の数」は、相続放棄があってもなかったものとして数えます(第15条第2項)。
日本に住所も居所もない相続人が申告などをする必要があるときは、国内に住所のある人から納税管理人を定め、納税管理人を定めたとき(出国する場合は出国の日まで)に「納税管理人届出書」を納税地の所轄税務署に提出します(国税通則法第117条、国税庁)。日本にいる相続人が10か月の間に納税管理人を届け出ないまま出国すると、その日が申告期限になります(相続税法第27条第1項)。海外在住の相続人が日本の相続税の対象になる財産の範囲は、相続人と被相続人の国籍や過去10年の住所によって変わります(国税庁タックスアンサーNo.4138)。
本ページは制度の一般的な説明で、個別の法律・税務アドバイスではありません。実際の判断や手続は、申述先の家庭裁判所、法務局、金融機関、税務署のほか、弁護士・司法書士・税理士などの専門家にご相談ください。
よくある質問
Q. 父が亡くなったことを海外で2か月後に知りました。相続放棄の3か月はいつから数えますか?
A. 民法第915条の3か月は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から数えます。裁判所Q&Aでは、被相続人が亡くなったことと、それにより自分が相続人になったことを知った時からとしています。死亡から3か月を過ぎて申述する場合、大阪家庭裁判所は知った日を明らかにする書面(通知の写しなど)が必要になることがあるとしているので、訃報の連絡記録を保管してください。
Q. 日本に帰国しないで相続放棄はできますか?
A. 相続放棄の申述は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申述書と戸籍等を提出して行い、千葉家庭裁判所などは郵送での提出を案内しています。郵送の場合は3か月以内に裁判所に届くよう余裕をもって送ります。費用は申述人1人につき収入印紙800円分と郵便切手で、裁判所から書面で照会があれば必ず回答します。調査が間に合わないときは、3か月以内に期間の伸長を申し立ててください。
Q. 海外に住んでいて印鑑証明がありません。遺産分割協議書はどうすればよいですか?
A. 在外公館で領事の面前で協議書に署名し、署名証明を受けて印鑑証明書の代わりにします。法務省は不動産登記でこの扱いを認め、在外公館から遠いなど取得が難しい場合は外国の公証人の署名証明も認めています。協議書と綴り合わせる形式か単独の形式かは提出先が決めるため、法務局や金融機関に確認してから在外公館を予約してください。
Q. 海外在住の相続人でも、法定相続情報一覧図の申出人になれますか?
A. 申出人は被相続人の相続人で、法務局の案内に住所の要件は書かれていません。ただし申出先は、被相続人の死亡時の本籍地・最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地を管轄する登記所から選ぶため、海外在住者は申出人の住所地以外から選びます。郵送でもでき、親族や司法書士などに代理も頼めます。申出人の住所確認書類として何が使えるかは登記所に確認してください。
Q. 実家で封をした自筆の遺言書が見つかりました。家族が開けてもよいですか?
A. 開けずに、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に検認を申し立ててください。封印のある遺言書は家庭裁判所で相続人等の立会いのもとで開封することになっており、家庭裁判所外で開封すると5万円以下の過料の対象です(民法第1004条、第1005条)。検認期日に海外の相続人が出席しなくても手続は行われます。公正証書遺言や法務局保管の遺言は検認不要です。
Q. 遺産分割前でも、親の預金から葬儀費用などを引き出せますか?
A. 民法第909条の2により、各相続人は相続開始時の預貯金額の3分の1に法定相続分を掛けた額まで、1つの金融機関につき150万円を上限に単独で払戻しを受けられます。払い戻した分は遺産の一部分割で取得したものとみなされます。相続放棄を考えている場合、遺産の処分は単純承認とみなされるおそれがあるため、使う前に弁護士に相談してください。
出典
本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、税務・法務の助言ではありません。個別の状況については税理士・税務署・年金事務所・市区町村などに確認してください。