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海外在住の離婚と子どもの親権:協議離婚の届出・外国の離婚判決と戸籍・共同親権・ハーグ条約・養育費(2026年)

最終確認: 2026-10(公的機関の情報をもとに作成)

海外に住む日本人の離婚では、どの国の法律で離婚できるかによって、日本の協議離婚届が使えるか、外国の裁判所の手続きが必要になるかが変わります。2026年4月1日に施行された改正民法で、離婚後に父母双方を親権者とする共同親権や、取決めがなくても請求できる法定養育費が導入されました。子を連れて国境を越えるとハーグ条約による返還の対象になることもあるため、法務省・裁判所の案内と法令に沿って制度と手続きを整理します。

海外で離婚するときの全体像:どの国の法律で離婚できるか

日本の法の適用に関する通則法27条は、離婚について婚姻の効力の規定(25条)を準用しています。夫婦の本国法が同じならその法律、同じでなければ夫婦の常居所地法(ふだん住んでいる国の法律)が同じならその法律、どちらもなければ夫婦に最も密接な関係がある地の法律で離婚が判断されます。ただし、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は日本法によります。

このため、日本人同士の夫婦は海外に住んでいても本国法が同じ日本法となり、日本の民法の協議離婚(763条)ができます。一方、日本人と外国人の夫婦が同じ外国に住んでいる場合は、原則としてその国の法律が適用され、その国が協議離婚を認めていなければ日本の協議離婚届は使えません。千葉市は、協議離婚を認めていない国や地域の例としてアメリカ合衆国、フィリピン、ブラジル、ペルー、ベトナム、ラオスなどを挙げています。日本で離婚が成立しても相手の国では認められず、相手の国で別の手続きが必要になる場合もあります。

海外にいるまま協議離婚する:在外公館・本籍地への離婚届

戸籍法40条により、外国にいる日本人は、その国に駐在する日本の大使・公使・領事(在外公館)に届出をすることができます。本籍地の市区町村に郵送で届け出ることもでき、江戸川区などは郵送による戸籍の届出を受け付けると案内しています。協議離婚には届出期間がなく、届け出た日から法律上の効力が生じます(江戸川区、西宮市)。届書には成人の証人2人の署名が必要です。在外公館で受け付けた届書は、外務大臣を経由して本籍地の市町村長に送られます(戸籍法42条)。

夫婦に未成年の子がいる場合、民法765条により、親権者の定めがされているか、親権者の指定を求める家事審判・家事調停の申立てがされていなければ離婚届は受理されません。後者の場合は、申立て後に協議離婚の届出をし、調停や審判の手続で親権者を定めます(裁判所)。また、外国人配偶者との離婚では、国籍や状況で必要書類が異なり、法務局への受理照会で時間がかかることもあるため、千葉市や江戸川区は事前に窓口へ問い合わせるよう求めています。

外国の裁判所で離婚したとき:判決の承認と戸籍への届出

外国の裁判所の確定判決が日本で効力を持つのは、民事訴訟法118条の要件をすべて満たす場合に限られます。家庭裁判所に当たる外国の家事事件の確定した裁判(これに準ずる公的機関の判断を含む)にも、その性質に反しない限り同条が準用されます(家事事件手続法79条の2)。外国で離婚が成立しても、日本の戸籍には自動的に反映されないため、届出が必要です。

江戸川区は、外国で離婚が成立した場合、協議離婚なら成立の日から3か月以内、裁判離婚なら成立の日から10日以内に、現地の大使館・領事館か本籍地などに届け出るよう案内しています。戸籍法は、離婚の裁判が確定したときは確定の日から10日以内に裁判の謄本を添えて届け出ることを定め(77条・63条)、正当な理由なく期間内に届け出ない人は5万円以下の過料の対象です(137条)。千葉市は、判決による離婚の届出には判決の謄本と確定証明書が必要と案内しており、外国語で作成された書類には翻訳者を明らかにした訳文を付けなければなりません(戸籍法施行規則63条)。外国の判決で求められる書類や期間の扱いは、在外公館または本籍地に事前に確認してください。

日本の裁判所で離婚の調停や訴訟をすることもできます。人事訴訟法3条の2により、被告の住所が日本にあるとき、夫婦の双方が日本国籍のとき、日本に住む原告と相手方の最後の共通の住所が日本にあったときなどは、日本の裁判所に離婚の訴えを起こせます。離婚調停の申立先は、相手方の住所地の家庭裁判所か当事者が合意で定める家庭裁判所で、費用は収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手です(裁判所)。

2026年4月1日施行の改正民法:共同親権と単独親権の選び方

民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)は2024年5月17日に成立し、2026年(令和8年)4月1日に施行されました(法務省)。これまで離婚後は父母の一方だけを親権者と定める必要がありましたが、改正後は協議離婚では父母の協議で、父母双方を親権者とする共同親権か、一方だけの単独親権かを定めます(民法819条1項)。協議が調わない場合や裁判離婚では、家庭裁判所が子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮して定めます。虐待のおそれがあるとき、DVのおそれなどで父母が共同して親権を行うことが困難なときは、必ず単独親権とされます(同条7項)。裁判所は、共同と単独のどちらかが原則と法律で定められてはいないと説明しています。

共同親権の場合も、すべてを父母で決めるわけではありません。民法824条の2により、監護・教育に関する日常の行為と、子の利益のため急迫の事情があるときは一方が単独で親権を行使できます。法務省のパンフレットでは、短期間の観光目的の旅行や通常のワクチン接種は日常の行為の例、子の転居や進路に影響する進学先の決定は日常の行為に当たらない例とされています。DVや虐待からの避難は急迫の事情の例です。意見が対立する特定の事項は、家庭裁判所が父母の一方を親権行使者に指定できます。父母の一方を「監護者」と定めると、その親が子の居所なども単独で決められます。

施行前に離婚して単独親権になっている場合、施行によって自動的に共同親権に変わることはありません。施行後は、子やその親族の申立てで、家庭裁判所が子の利益のため必要と認めれば、単独から共同への変更も含めて親権者を変更できます(民法819条6項、法務省)。財産分与を家庭裁判所に請求できる期間も離婚後2年から5年に延びましたが、施行前(2026年3月31日以前)に離婚した場合は2年のままです(附則4条)。

養育費と親子交流:法定養育費(月2万円)・先取特権(月8万円)と海外での回収

改正民法により、養育費の取決めをしないまま協議離婚した場合でも、離婚の時から引き続き子を主に監護している親は、他方の親に法定養育費を請求できるようになりました(民法766条の3)。額は法務省令で定められ、子1人当たり月額2万円です(法務省、裁判所)。離婚の日から発生し、毎月末にその月の分を支払います。父母が養育費を取り決めた日、養育費の審判が確定した日、子が18歳になった日のいずれか早い日まで続きます。支払能力がないことなどを証明した親は支払を拒めます。施行日より前(2026年3月31日以前)に離婚した場合は対象外です(附則3条2項)。

養育費の取決めには先取特権という優先権が付き、公正証書や調停調書がなくても、父母が作成した取決めの文書に基づいて差押えを申し立てられるようになりました。先取特権の上限は子1人当たり月額8万円で、施行前の取決めでは2026年4月1日以後に生じる分に限られます(法務省、附則3条1項)。親子交流は、父母の協議で定め、調わなければ家庭裁判所が定めます。手続中の試行的実施や、特に必要がある場合の祖父母などとの交流の定めも設けられました(民法817条の13、766条の2)。

相手が海外に住んでいる場合の回収は、制度上の手当てが限られます。日本の裁判所が養育費の審判の管轄権を持つのは、主に、支払う側(申立人でない側)か、子を監護する親や子の住所が日本にあるときです(家事事件手続法3条の10)。日本の調停調書などで取り決めた養育費が相手の住む国で効力を持つか、外国にある財産に執行できるかは、その国の法律と手続きによります。東京家庭裁判所も、ハーグ条約の調停での合意事項が常居所地国で効力を持つかはその国の法律の解釈により異なると説明しています。逆に、外国の裁判所の養育費の判決で日本にある財産を差し押さえるには、民事執行法24条の執行判決(家事事件の裁判は家庭裁判所の管轄)を得る必要があり、民事訴訟法118条の要件を満たさなければなりません。どの国の法律で養育費を決めるかは、扶養義務の準拠法に関する法律2条により、原則として扶養を受ける子の常居所地法です。

ハーグ条約:子の連れ去り・留置の返還と面会交流の援助

ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)は、国境を越えた子の連れ去りを防ぎ、子を元の居住国(常居所地国)に迅速に返還するための国際協力と、国境を越えた親子交流の実現のための協力を定めた条約です。日本は2014年1月に締結し、国内の実施法(ハーグ条約実施法)は2014年4月1日に施行されました(東京家庭裁判所)。外務省の資料では、16歳未満の子の、締約国の間での連れ去り・留置と面会交流が対象です。親権や監護の争いは、子が返還された後に常居所地国で解決するという考え方に立っています。

日本の中央当局は外務大臣です(実施法3条)。外務省への援助申請は、日本語か英語の申請書で行い、他の締約国の中央当局を経由することもできます。外務大臣は子の所在の特定のために関係機関に情報提供を求めたり、当事者間の協議のあっせんをしたりできます(実施法5条、9条)。日本に連れ去られた子の返還は、東京または大阪の家庭裁判所に申し立てます。裁判所は、子が16歳未満で日本にいること、常居所地国の法令による監護の権利の侵害であること、その時に常居所地国が締約国だったことの4つを満たせば、原則として返還を命じます(27条)。申立てから6週間が過ぎると、申立人か外務大臣は審理の進み具合の説明を求められます。

子を連れて国境を越える前に:パスポートの同意と転居のルール

一方の親の同意を得ないまま子を常居所地国から連れ出すこと(連れ去り)や、約束の期限を過ぎても子を戻さないこと(留置)は、ハーグ条約の対象になる可能性があります。実施法が定める返還の要件(27条)に親の国籍は含まれていないため、日本人同士の夫婦でも対象になり得ます。外務省のリーフレットは、国によっては子を連れて出入国する際に他方の親の渡航同意書を求められたり、子を連れた出国に事前に裁判所の許可が必要だったりすること、実の子でも一方の親の同意なく国外に連れ出すことが誘拐罪などの対象となり、その国に再入国したときに逮捕されることがある国もあることを挙げています。子を連れた出国を考えるときは、その国の法律に詳しい弁護士への相談を勧めています。

日本の民法でも、共同親権の場合、子の転居は原則として日常の行為に当たらず父母が共同で決める事項です(法務省)。DVや虐待からの避難などの急迫の事情がある場合、監護者に定められた親の場合、家庭裁判所に親権行使者を指定された場合は、一方の親が単独で決められます。未成年の子のパスポートは、婚姻中の共同親権では親権者双方の同意が必要とされ、一方が法定代理人欄に署名すれば他方の同意があったものと事実上推定する運用です。他方の親権者は「未成年の子に対する旅券発給の不同意書」を事前に出すことができ、この取扱いは離婚後に共同親権となる場合も同様です(法務省 Q&A)。

海外で家庭の問題に困ったときは、その国の日本大使館・総領事館に相談できます。外務省のリーフレットによると、在外公館は、渉外家事事件に詳しい弁護士や通訳、調停機関、面会交流支援機関、DV被害者支援団体の紹介、安全が心配な場合の現地関係機関への通報・支援要請などを行っています。本ページは制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案への助言ではありません。具体的な判断は、弁護士や在外公館、家庭裁判所、本籍地の市区町村にご相談ください。

よくある質問

Q. 外国人の配偶者と同じ国に住んでいます。在外公館に協議離婚届を出せますか?

A. 離婚に適用される法律によります。通則法27条により、夫婦の本国法が異なり、夫婦が同じ外国に住んでいる場合は、原則としてその国の法律で離婚が判断されます。その国が協議離婚を認めていなければ日本の協議離婚届は使えず、裁判所の手続きなどが必要です。日本人同士の夫婦であれば、本国法が同じ日本法なので協議離婚ができます。届出の前に在外公館か本籍地の市区町村に確認してください。

Q. 外国の裁判所で離婚が成立しました。日本の戸籍はどうなりますか?

A. 自動的には反映されないため、届出が必要です。江戸川区は、外国で裁判離婚が成立した場合は成立の日から10日以内に、現地の大使館・領事館または本籍地などに届け出るよう案内しています。判決が日本で効力を持つには、外国裁判所の裁判権、被告への送達または応訴、公序良俗、相互の保証という民事訴訟法118条の要件を満たす必要があります。

Q. 2026年3月以前に離婚して単独親権です。共同親権に変わったり、法定養育費を請求できたりしますか?

A. 施行によって自動的に共同親権になることはありません。施行後は、子やその親族の申立てで家庭裁判所が親権者を変更することがあり、単独から共同への変更もあり得ます。法定養育費(子1人当たり月額2万円)は施行後に離婚した場合だけが対象で、施行前に離婚した場合は、協議や家庭裁判所の手続きで養育費を取り決める必要があります(法務省)。

Q. 一時帰国のときに子どもを日本に連れて帰り、そのまま住み続けてもよいですか?

A. 他方の親の監護の権利を侵害する形で子を常居所地国から連れ出したり、約束の期限を過ぎても戻さなかったりすると、その国と日本がハーグ条約の締約国であれば、日本の家庭裁判所で子の返還を命じられる可能性があります。返還の要件に親の国籍は含まれていないため、日本人同士の夫婦でも対象になり得ます。国によっては刑事責任を問われることもあるため、事前に弁護士や在外公館に相談してください。

Q. 離婚後に共同親権となった場合、子どものパスポートは片方の親だけで申請できますか?

A. 法務省のQ&Aによると、未成年の子の旅券発給には親権者双方の同意が必要とされ、一方の親権者が法定代理人署名欄に署名すれば他方の同意があったものと事実上推定する運用です。他方の親権者が事前に「未成年の子に対する旅券発給の不同意書」を出していれば発給されません。この扱いは、離婚後に共同親権となる場合も同様です。

Q. 海外に住む元配偶者から養育費を回収できますか?

A. 日本の調停などで取り決めた養育費が相手の国で効力を持つか、外国にある財産に執行できるかは、その国の法律と手続きによります。外国の裁判所の養育費の判決で日本にある財産を差し押さえる場合は、民事執行法24条の執行判決を得る必要があります。個別の見通しは、弁護士や在外公館に相談してください。

出典

本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、税務・法務の助言ではありません。個別の状況については税理士・税務署・年金事務所・市区町村などに確認してください。

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