海外へ住所を移すときや日本に帰国するときの引越荷物は、旅具通関という簡易な手続で輸出入でき、帰国時は本人と家族が使う物品が関税の免除の対象になります。ただし帰国後に届く荷物は、入国のときに「携帯品・別送品申告書」を2通出して別送品として申告しておかないと免税が受けられず、一般の貿易貨物と同じ輸入手続が必要になります。持ち出し・持ち込みが規制される物や現金等の届出も含め、税関などの公式情報に沿って整理します。
引越荷物と税関の全体像:旅具通関と別送品
税関のカスタムスアンサー7301によると、通常の引越荷物は「旅具通関」という簡易な手続で輸出または輸入ができます。ここでいう引越荷物は、日本に生活の本拠を移すため入国(帰国)する人や、永住等の目的で出国する人が携帯または別送する品物のうち、本人とその家族が使用するもの及び職業上必要なもので、個人的な事情に照らし相応と認められるものをいいます。本人及びその家族が住居を設定し維持するために必要と認められる貨物が対象で、これを超える商業貨物などは一般の貿易貨物と同じ通関になります。
荷物は、自分で持って行く「携帯品」と、郵便・宅配便・航空便・船便などで別に送る「別送品」に分かれます。出国時は荷物を送る側として輸出の手続、帰国時は受け取る側として輸入の手続と免税の申告が必要です。移住先の国に着いたときは、その国の税関の規則に従って輸入の手続をすることになり、日本の制度とは別に考える必要があります。出国前に、何を携帯し、何を別送し、何を処分・保管するかを分けておくと、それぞれの手続の準備がしやすくなります。
- 出国時:携帯品は口頭で申告でき、出国後6か月以内に別送するものも、法令による許可・承認が不要なものに限り旅具通関扱いができます(税関)
- 帰国時:別送品がある人は、入国の際に「携帯品・別送品申告書」を2通提出し、1通に確認印を受けて保管します(税関)
- 自動車は、出国時・帰国時とも一般の貿易貨物と同様の申告手続が必要です。出国時は船舶・航空機も同様です(税関)
日本から海外へ送る荷物の輸出手続(引越業者・郵便)
家財をまとめて送る場合は、海外引越を扱う運送業者に梱包・輸送とあわせて通関手続を任せるのが一般的です。輸出許可書が必要な場合や、他港まで運送が必要な別送品がある場合は「輸出・輸入託送品(携帯品・別送品)申告書」(税関様式C第5340号)を2通提出し、輸出が許可されると1通が許可書として交付されます。商業貨物や高額な物品は一般の輸出手続が必要になることがあるため、出国する空港などを管轄する税関に事前に問い合わせるよう案内されています。
国際郵便で送る場合、税関のカスタムスアンサー6201によると、価格が20万円以下の郵便物は税関への輸出申告は不要で、日本郵便の国際郵便マイページサービスで税関告知書を作成して貼り付け、郵便局から差し出します。20万円を超える郵便物は輸出申告が必要で、仕入書など必要書類をそろえて日本郵便や通関業者に依頼するか、自分で税関に申告します。価格欄にはFOB価格(原則として内容品の購入金額など実際の決済金額)を書きます。
日本郵便は、国際郵便では全世界共通で送れないものと、あて先の国によって送れないものがあるとしており、スプレー缶、香水、マニキュア、アルコール濃度24%を超える酒類、電子たばこ、モバイルバッテリーなどを代表例に挙げています。航空危険物は船便扱いでも引き受けられません。時計やネックレスなど現在使っている外国製品を持ち出すときは、「外国製品持出し届」で税関の確認を受けておくと、日本に再び持ち込む際に外国で買ったものと区別でき、課税を避けやすくなります(機内預けにする場合は航空会社に預ける前に確認を受けます)。
輸出が禁止・規制される物と現金等の持出し・持込みの届出
関税法第69条の2は、麻薬・覚醒剤など、児童ポルノ、知的財産権を侵害する物品、不正競争防止法に違反する一定の物品の輸出を禁止しています。これとは別に、関税法以外の法令(他法令)で許可・承認が必要な物があり、許可等を受けていることを税関に証明しなければ輸出は許可されません。税関のカスタムスアンサー5501(令和8年4月現在)は、外国為替及び外国貿易法(外為法)と輸出貿易管理令の対象として武器・化学兵器、麻薬、ワシントン条約該当物品、特定有害廃棄物、制裁対象貨物等を、文化財保護法の対象として重要文化財・重要美術品・天然記念物・重要有形民俗文化財を挙げています。文化財保護法第44条は、重要文化財は文化庁長官の許可がない限り輸出してはならないと定めています。該当するかどうかは主管省庁に確認するよう案内されており、税関は該非の照会には答えられないとしています。
現金等を持って出入国する場合、外為法第19条と外国為替令第8条の2に基づき、現金(日本円・外国通貨)、小切手(トラベラーズチェックを含む)、約束手形、有価証券の合計額が100万円相当額(北朝鮮を仕向地とする輸出は10万円相当額)を超えるとき、または純度90%以上の金の地金が1キログラムを超えるときは、「支払手段等の携帯輸出・輸入申告書」を税関に提出する必要があります。出国時は、機内預けにするなら航空会社に預ける前に出発ロビー等の税関事務室で、機内持込みなら出国審査場前の税関出国カウンターで申告します。入国時は税関検査場で提出します。この申告書は携帯品・別送品申告書とは別の様式です。
- 植物を持ち出すときの規制は相手国によって異なり、多くの国で土の持込みが禁止されています。相手国が検査証明書を求める場合は植物防疫所で輸出検査を受けます(植物防疫所)
- 肉製品などの持ち出しは動物検疫所の案内(肉製品等の海外への持ち出し)を確認します
- ロシアや北朝鮮などを仕向地とする支払手段・貴金属の輸出には、外為法に基づく許可申請が別途必要な場合があります(税関)
移住先の輸入規制と免税は国ごとに違う(英国・カナダの例)
移住先で引越荷物を受け取るときの免税の条件や手続は、国ごとにまったく異なります。日本の税関手続を済ませても、相手国の要件を満たさなければ関税等がかかったり、持ち込めなかったりします。ここでは例として、英国とカナダの公式案内の要点を挙げます。どちらも条件の一部であり、実際の手続は最新の公式情報や引越業者で確認してください。相手国の税関当局や在日大使館の公式サイトで、免税の条件、必要な申告書、酒類・たばこ・食品・医薬品の持ち込み制限を出発前に確かめておくと安心です。
英国の歳入関税庁(HMRC)の案内では、転居による免税(Transfer of Residence relief)を受けるには、原則として英国外に12か月以上継続して住んでいたこと、移住前に6か月以上その物品を所有・使用していたこと、英国に住み始めてから12か月以内に輸入することなどが条件で、事前にToR1という申請で承認を受けます。酒類・たばこは対象外で、免税を受けた物品は12か月間、貸与や譲渡ができません。カナダ国境サービス庁(CBSA)の案内では、移住者(settler)は到着前に所有・使用していた家財を免税で持ち込めますが、後から届く荷物(goods to follow)は最初の入国時に提出する一覧(Form B4)に記載しておく必要があり、記載のない物は通常の輸入として課税されます。
帰国時の別送品申告:申告書2通、6か月以内、申告しないと免税なし
帰国後に届く引越荷物は「別送品」として扱われます。税関によると、外国から送るときは品物の外装と、郵便なら税関告知書、それ以外なら送り状などに「別送品(Unaccompanied Baggage)」と明確に表示し、帰国する本人を名宛人にします。表示がないと運送業者が別送品と知らずに一般の輸入として通関してしまい、免税枠が使えなくなることがあるため、運送業者(通関業者)に別送品を扱えるかを事前に確認し、別送品であることを伝えておくことが重要です。
入国(帰国)の際には「携帯品・別送品申告書」(税関様式C第5360号)を2通提出します。数か国から別送した場合でも2通で、うち1通に税関の確認印が押されて返されます。入国後に別送品の申告をすることはできず、確認印を受けた申告書の再発行もできません。申告しなかった場合や申告書をなくした場合は、一般の貿易貨物と同様の輸入手続が必要になります。別送品は原則として入国後6か月以内に通関できるものに限られ、関税定率法施行令第14条も、別送品の免税を受けるには入国の際に申告書を出して確認を受け、原則として入国後6か月以内に輸入することを定めています。日本に住居を移す人が帰国後に元の居住国から引越荷物を発送する場合も、これらの手続をすべて行い、帰国後6か月以内に通関できれば別送品として扱われます。
荷物が届いたあとの手続は輸送方法で異なります。郵便の場合は税関外郵出張所から通知の葉書が届くので、確認印のある申告書を提出します。航空便・船便は到着通知を受けたら、申告書や旅券、輸送関係書類、内容品明細書などを持って到着地の税関で申告します。品物の所在や運賃、受取り日時は航空貨物代理店や船会社に照会し、動植物検疫が必要な物は動植物検疫所などで検査を受け、課税扱いとなった場合は税金を納めます。国際宅配便は、通関前に業者の日本代理店に申告書を渡し、別送品として通関するよう依頼します。
入国時の申告は、デジタル庁のVisit Japan Webで事前に携帯品申告の情報を登録し、表示される二次元コードを使う電子申告もできます。デジタル庁は、Visit Japan Webは海外から入国する人のほか日本に帰国する人も利用できるとしています。税関によると、新千歳・成田・羽田・中部・関西・福岡・那覇の7空港では電子申告端末と電子申告ゲートを利用でき、IC旅券が必要で、家族でも1人ずつ手続します。ただし、免税範囲を超える携帯品や別送品の申告がある人は、追加の手続のため税関職員のいる検査台に案内されます。
引越荷物の免税の範囲と、自動車・船舶などの扱い
関税定率法第14条第8号は、日本に住所を移すため入国する人が入国の際に輸入し、または別送して輸入する物品のうち、本人や家族の個人的な使用に供するもの及び職業上必要な器具について関税を免除すると定めています(自動車、船舶、航空機などは除かれます)。税関のカスタムスアンサー7301は、日本から外国へ住所を移して外国に1年以上住んでいた場合などに、入国後6か月以内に輸入する品物に限り免税になると案内しています。輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律第13条により、この免除を受ける物品は輸入時の消費税も免除されます。
入国前に使っていた自動車は、一般の貿易貨物と同様の輸入申告が必要です。関税定率法第15条第1項第9号は、日本に住所を移すため入国する人や家族が個人的に使用する自動車、船舶、航空機などで、入国前に既に使用したもの(船舶と航空機は入国前1年以上使用したもの)について、関税を免除すると定めています。税関の案内では、荷物が到着して申告する際に「自動車等の引越荷物免税申請書」(税関様式T1280号)3通に、外国の登録書など使用済みであることを証明する書類を添付し、日本に住所を移すため入国することを証明する書類を提示します。輸入許可の日から2年以内に転売・譲渡等をしないことが条件で、2年以内に用途外に使ったり譲渡したりすると、免除された関税が徴収されます。日本で走らせるための登録や検査は別の手続です。
旅行者の免税範囲と、超えた分の簡易税率
帰国時に持ち帰る土産品や、海外で新しく買った物品については、旅行者の免税範囲が目安になります。税関によると、携帯品と別送品(入国後6か月以内に輸入するもの)のうち個人的に使用すると認められるものに限り、入国者1人当たり次の範囲で免税になり、携帯品と別送品の両方がある場合は合算します。海外市価は外国での通常の小売購入価格で、円への換算は税関長が公示するレートで行われます。20歳未満は酒類とたばこが免税にならず、6歳未満の子どもはおもちゃなど明らかに本人が使う物以外は免税になりません。
免税範囲を超えた分は、海外での小売価格に0.6を掛けた額を課税価格とし、関税と消費税などをまとめた簡易税率で計算されるのが基本です(関税定率法第3条の2)。税関が示す簡易税率は、ウイスキー・ブランデー1リットル800円、ラム・ジン・ウォッカ500円、リキュール400円、焼酎300円、ワイン・ビールなどその他の酒類200円、紙巻たばこ1本15円、その他の品物(関税が無税のものを除く)15%です。1個(1組)の課税価格が10万円を超えるものなどは簡易税率が使えず、一般の税率で計算されます。腕時計、パソコン、ゴルフクラブなど関税が無税の品物は、消費税と地方消費税(合計10%、軽減税率の品物は8%)だけがかかります。
- 酒類:3本(1本760ml換算)
- たばこ:紙巻たばこのみなら200本、加熱式たばこのみなら個装等10個、葉巻たばこのみなら50本、その他の場合は250g
- 香水:2オンス(1オンスは約28ml。オーデコロン、オードトワレは含みません)
- その他の品目:海外市価の合計額20万円まで。1個で20万円を超える品物は全額が課税され、1品目ごとの海外市価の合計額が1万円以下のものは原則として免税(20万円の計算に含めません)
持ち込みが禁止・制限される物:医薬品・化粧品、動植物、ワシントン条約
関税法第69条の11は、麻薬・覚醒剤、指定薬物、拳銃などの銃砲、爆発物、偽造貨幣、知的財産権侵害物品などの輸入を禁止しています。医薬品や化粧品は、厚生労働省の案内によると、個人が自分で使うために持ち帰る場合も原則として地方厚生局で輸入確認証の交付を受ける必要がありますが、一定の数量までは税関の確認だけで輸入できます。それを超える場合や、医療用麻薬などを持ち込む場合は事前の手続が必要です。税関は、このほか医薬品医療機器等法、植物防疫法、家畜伝染病予防法などでも輸入が禁止されている物があると案内しています。
植物(果物、野菜、切り花、米、根に付いた土など)は、入国時に税関検査の前に植物検疫カウンターで検査を受ける必要があり、輸出国政府機関の検査証明書がないと持ち込めません。肉製品などの畜産物は、動物検疫所によると、おみやげや個人消費用でも輸出国政府機関の検査証明書がないものは持ち込めず、ジャーキー、ハム、ソーセージ、肉まんなどの加工品も対象です。違法に持ち込むと3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象になります。犬・猫を連れて帰る場合は、指定地域以外からならマイクロチップ、狂犬病予防注射、抗体検査、採血日から180日間以上の待機、到着の40日前までの届出などが必要です。ワシントン条約の対象は生きた動植物だけでなく、毛皮、皮革製品、象牙製品、漢方薬なども含まれます。附属書Iの種は商業目的の取引が禁止され、附属書IIの種は輸出国政府の輸出許可書が必要です。
- 外用剤(毒薬・劇薬・処方箋薬を除く)と化粧品:標準サイズで1品目24個以内(厚生労働省)
- 毒薬、劇薬、処方箋薬:用法用量からみて1か月分以内。その他の医薬品・医薬部外品:2か月分以内(厚生労働省)
- 家庭用医療機器は1セット、使い捨てコンタクトレンズなどは2か月分以内(厚生労働省)
- 医療用向精神薬で1か月分を超える量や注射剤を携帯して持ち込む場合は、事前に輸入確認証の取得が必要です(厚生労働省)
よくある質問
Q. 帰国後に海外から引越荷物を送っても免税になりますか?
A. 税関の案内では、日本に住居を移すために帰国する人が帰国後に元の居住国から引越荷物を発送する場合でも、入国時に携帯品・別送品申告書を2通提出して確認を受けるなどの手続をすべて行い、帰国後6か月以内に通関できるものであれば別送品として扱われます。入国時に申告していないと、後から別送品として申告することはできません。
Q. 別送品の申告を忘れたり、確認印のある申告書をなくしたりしたらどうなりますか?
A. 入国後に別送品を申告することはできず、確認印を受けた申告書の再発行もできません。この場合は一般の貿易貨物と同様の輸入手続が必要となり、引越荷物や旅行者の免税が受けられないことがあります。郵便で課税通知書が届いた場合は、税金を納める前に税関外郵出張所に免税の可否を問い合わせるよう税関は案内しています。
Q. 海外で使っていた家具や家電は、20万円を超えても免税ですか?
A. 日本に住所を移すため入国する人の引越荷物は、関税定率法第14条第8号により、本人や家族の個人的な使用に供するもの及び職業上必要な器具について関税が免除され、旅行者の「その他の品目20万円」の免税範囲とは別の扱いです。税関は、外国に1年以上住んでいた場合などで入国後6か月以内に輸入するものに限るとしています。商業用と見られる量の物品や高額な物品は一般の輸入手続が必要になる場合があります。
Q. 海外で使っていた車を日本に持ち帰ると税金はかかりますか?
A. 入国前に本人や家族が使用していた自動車は、自動車等の引越荷物免税申請書(税関様式T1280号)3通と使用済みであることを証明する書類を出し、日本に住所を移すための入国であることを証明する書類を示すことで、関税(あわせて輸入時の消費税)の免除を受けられます。輸入許可の日から2年以内に転売・譲渡等をしないことが条件です。日本の登録や検査は別に必要です。
Q. 移住のために預金を現金で持ち出す場合、届出は必要ですか?
A. 現金、小切手、約束手形、有価証券の合計額が100万円相当額(北朝鮮を仕向地とする場合は10万円相当額)を超える場合は、出国時に支払手段等の携帯輸出・輸入申告書を税関に提出する必要があります。機内預けにする場合は、航空会社に預ける前に税関事務室で申告します。金の地金(純度90%以上)は1キログラムを超える場合に申告が必要です。
出典
本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、税務・法務の助言ではありません。個別の状況については税理士・税務署・年金事務所・市区町村などに確認してください。