日本の居住者が暗号資産(仮想通貨)で得た利益は原則として雑所得となり、給与などと合算して最高55%(所得税45%・住民税10%)で課税されます。一方、国税庁のFAQでは、非居住者が日本の暗号資産交換業者に保有する暗号資産を売却しても日本での申告は不要とされており、居住者でなくなる前と後のどちらで売るかで日本の課税が大きく変わります。2026年1月からは取引所への居住地国の届出(CARF)が始まり、20%の分離課税化も法律上決まりましたが、適用開始日はまだ確定していません。
日本居住者の暗号資産の課税:雑所得・総合課税で最高55%
国税庁の「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」(令和7年12月最終改訂)では、暗号資産取引で生じた利益は所得税の課税対象となり、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されるとしています。雑所得は給与所得などと合算する総合課税で、所得税の税率は5%から45%の7段階です(課税される所得金額が4,000万円以上の部分が45%)。これに住民税の所得割10%(道府県民税4%・市町村民税6%)が加わるため、合計で最高55%になります。このほか、所得税額の2.1%の復興特別所得税がかかります(2027年分以後は防衛特別所得税の創設と復興特別所得税の税率引下げが行われますが、合計の税率は変わらないとされています)。
日本円に換金したときだけでなく、次のような場合も課税の対象になります。
- 暗号資産の売却(日本円への換金):譲渡価額と譲渡原価等との差額が所得になります
- 暗号資産で商品やサービスを購入した場合:保有する暗号資産を譲渡したことになり、同様に所得を計算します
- 暗号資産同士の交換(例:BTCでXRPを購入):交換に使った暗号資産の譲渡として所得を計算します
- 譲渡原価は総平均法または移動平均法で計算し、個人が方法を選択しない場合は総平均法になります
- その年の暗号資産取引の収入金額が300万円を超える場合は、帳簿書類の保存があれば原則として事業所得、保存がなければ原則として雑所得(業務に係る雑所得)に区分されます
- 雑所得の損失は、給与所得など他の所得と通算できません
- 暗号資産の証拠金取引は、FXと異なり申告分離課税の対象から除かれており、総合課税です
- 暗号資産を相続・遺贈・贈与で取得した場合は相続税・贈与税の対象となり、個人が暗号資産を贈与した場合は、贈与した側も贈与時の時価を総収入金額に算入する必要があります
非居住者になった後の扱い:国内源泉所得に当たるか
所得税法では、国内に住所があるか、現在まで引き続いて1年以上居所がある個人が居住者で、それ以外が非居住者です。住所は「生活の本拠」をいい、客観的な事実によって判定されます。居住者(非永住者以外)は国内外すべての所得に課税され、非居住者は日本で生じた所得(国内源泉所得)だけが課税対象です。どちらに当たるかの詳しい判定は、居住者・非居住者の判定(183日ルール)に関するガイドをご覧ください。
国税庁の暗号資産FAQ(1-8)は、アメリカに住む人が保有する暗号資産を日本の暗号資産交換業者に売却した例について、「日本での申告の必要はありません」と回答しています。資産の譲渡による国内源泉所得は限定されており、非居住者が日本の暗号資産交換業者に保有する暗号資産を譲渡して生じる所得は所得税の課税対象とされていない、という説明です。源泉徴収の対象にもなりません。
FAQで国内源泉所得として挙げられている資産の譲渡所得は次のとおりです(恒久的施設に帰属する所得を除く)。
- 国内にある不動産、不動産の上に存する権利等の譲渡による所得
- 国内にある山林の伐採または譲渡による所得
- 内国法人の発行する株式等の譲渡による所得で一定のもの、不動産関連法人の株式等の譲渡による所得
- 非居住者が国内に滞在する間に行う国内にある資産の譲渡による所得(一時帰国中に取引する予定がある場合は、事前に税務署や税理士に確認すると安心です)
- 日本で課税されないことと、移住先の国で課税されないことは別問題です。移住先の居住者になれば、通常はその国の税法に従って課税されます(後述)
出国の年の申告と、売却・出国のタイミング
出国した年は、1月1日から出国の日までの「居住者期間」の所得は国内外を問わずすべて課税され、出国の翌日以後の「非居住者期間」は国内源泉所得だけが課税されます。暗号資産の売却益の収入計上時期は、原則として売却した暗号資産の引渡しがあった日で、選択により契約をした日とすることもできます。居住者期間中に売却・交換・決済に使った分は、出国前でも出国後でも日本で申告が必要です。
申告の方法は、出国の時までに納税管理人を届け出るかどうかで変わります(詳細は海外からの確定申告に関するガイドを参照)。
- 出国の時までに納税管理人を届け出た場合:居住者期間のすべての所得と非居住者期間の国内源泉所得を合わせて、翌年2月16日から3月15日までに納税管理人を通じて確定申告・納税します
- 納税管理人を届け出ずに出国する場合:居住者期間のすべての所得について、出国の時までに準確定申告をします
- 住民税は、その年の1月1日時点で住所がある市区町村が、前年1月1日から12月31日までの所得をもとに課税します。出国した年の売却益に対する住民税の扱いは、翌年1月1日に国内に住所があるかどうかで変わります(詳しくは海外移住と住民税に関するガイドを参照)
- 出国前に売却する場合:利益は日本で課税されます(総合課税で最高55%)。値上がり益を確定させて日本で納税を終えたうえで出国できるのが利点です
- 出国後(非居住者になってから)売却する場合:上記のとおり日本の取引所で売っても日本では課税されませんが、移住先で課税されることがあり、移住先での取得価額の扱いも国によって異なります。また、日本の取引所の口座を出国後も使えるとは限りません(後述)
- 住民票を抜いたかどうかだけで非居住者になるわけではなく、生活の本拠がどこにあるかで判定されます。出国後も日本に生活の本拠が残っていると判断されれば、居住者として全世界の所得に課税されます
- 移住先の税制(キャピタルゲイン課税の有無や税率、移住前の値上がり益の扱い、居住者となる時期)は国によって大きく異なります。売却のタイミングは、日本と移住先の両方の税制を確認してから判断してください
暗号資産は国外転出時課税(出国税)の対象外
国外転出時課税は、1億円以上の対象資産を持つ一定の居住者が国外転出をするときに、対象資産を譲渡したものとみなして含み益に所得税を課す制度です(制度の詳細は国外転出時課税(出国税)のガイドを参照)。国税庁タックスアンサーNo.1478で対象資産とされているのは、有価証券(株式や投資信託など)、匿名組合契約の出資の持分、未決済の信用取引・発行日取引、未決済のデリバティブ取引で、暗号資産は挙げられていません。
- 暗号資産を持ったまま出国しても、国外転出時課税によって含み益に課税されることはありません
- 1億円の判定は対象資産の価額の合計で行うため、暗号資産の評価額は含めません
- ただし、株式や投資信託などの有価証券を1億円以上持っている場合は、暗号資産とは別に国外転出時課税の対象になり得ます
- 相続・贈与については、暗号資産も相続税・贈与税の対象です。海外に住む人が関係する場合の納税義務の範囲は、海外移住と相続税・贈与税に関するガイドを参照してください
日本の暗号資産交換業者の口座:移住前に確認すること
日本の暗号資産交換業者の多くは、日本に住む人の利用を前提にしています。非居住者の口座の扱いは業者ごとに異なり、規約上、口座の解約や取引制限の対象になることがあります。例えば、ビットトレード株式会社が公表している「口座開設対応方針」では、税務上の居住地国が「日本のみ」ではない顧客は原則として口座開設を断り、口座開設後に税務上の居住地国が変わって「日本のみ」でなくなった顧客は原則として口座を解約してもらうとし、解約手続が完了するまで取引を制限する場合があるとしています。
出国してから口座が使えなくなると、売却や出金の手続が難しくなるおそれがあります。出国前に、次の点を利用中の業者の規約やヘルプで確認しておきましょう。
- 海外に転居した場合に口座を継続できるか、解約が必要か、出金・送付の方法と期限
- 口座を解約する場合、日本円で出金するか、自分で管理するウォレットなどへ送付するか(日本円への換金は、居住者期間中であれば日本で課税されます)
- 後述のCARFにより、居住地国が変わった場合は、その日から3か月を経過する日までに異動届出書を業者に提出する必要があります
- 移住先の取引所を使う場合、その国の規制や、日本の居住者・非居住者の扱いを確認してください。なお金融庁は、日本の居住者向けに無登録で暗号資産交換業を行う海外業者に警告書を出し、その一覧を公表しています
- 年間取引報告書や取引履歴は、出国の年の確定申告に必要です。口座を解約する前に必ずダウンロードしておきましょう
CARF(暗号資産等報告枠組み):2026年1月から届出、2027年から情報交換
CARF(Crypto-Asset Reporting Framework)は、OECDが策定した、非居住者の暗号資産等取引情報を税務当局間で自動的に交換するための国際基準です。日本では令和6年度税制改正で実特法が改正され、2026年1月1日から施行されています。国税庁によると、日本を含む60を超える国・地域が2027年または2028年までに情報交換を開始することを表明しており、日本は2027年から情報交換を開始します。
- 2026年1月1日以後に国内の暗号資産交換業者等と新たに取引する人は、取引を行う際に、氏名・住所・居住地国・外国の納税者番号などを記載した新規届出書を業者に提出する必要があります
- 2025年12月31日時点で取引をしている人も、2026年12月31日までに新規届出書の提出が必要です。居住地国が日本の人も「日本」と記載します(マイナンバーの記載は不要)
- 届出書を出した後に居住地国などが変わった場合は、その異動を生じた日から3か月を経過する日までに異動届出書を提出します。海外移住で居住地国が変わるときは、この手続が必要です
- 国内の暗号資産交換業者等は、2027年以後、毎年4月30日までに、居住地国が報告対象国である人の前年分の暗号資産等取引情報を所轄税務署長に報告し、その情報は租税条約等に基づき相手国の税務当局に提供されます(初回は2027年4月30日までに2026年分を報告)
- 逆に、外国の暗号資産交換業者等が持つ日本の居住者の取引情報も、その国から日本に提供されます。そのため、外国の業者で取引する場合は、その国の法令により居住地国の届出を求められることがあります
- 報告対象国は、CARFに従った情報交換について税務当局間で合意した租税条約等の相手国で、今後順次、省令に規定される見込みとされています
20%分離課税への見直し:法律は成立、適用開始日は未確定
令和8年度税制改正の大綱(2025年12月26日閣議決定)では、金融商品取引法等の改正を前提に、居住者等が暗号資産取引業を行う者に対して「特定暗号資産」(金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等)を譲渡等した場合の所得を、他の所得と分離して20%(所得税15%・個人住民税5%)で課税することが盛り込まれました。財務省の「令和8年度税制改正の解説」によると、この申告分離課税は租税特別措置法第38条の2として創設され、対象は居住者と恒久的施設を有する非居住者です。
前提となる「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」は2026年4月10日に国会に提出され、7月15日に成立しました。暗号資産取引の規制を資金決済法から金融商品取引法に移す内容で、暗号資産関係の規定は公布の日から1年を超えない範囲内で政令で定める日に施行されます。分離課税は、この改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後に行う特定暗号資産の譲渡から適用されます。
- 2026年10月時点で、金融庁・財務省の公表資料では暗号資産関係の規定の施行日(政令)を確認できませんでした。施行日が2026年中なら2027年1月1日から、2027年中なら2028年1月1日からの適用になります
- 2026年分の暗号資産の利益は、現行どおり原則として雑所得・総合課税です
- 分離課税の適用後は、特定暗号資産の譲渡損失を翌年以後3年間繰り越して控除できるようになります
- 特定暗号資産に係る暗号資産デリバティブ取引も、先物取引に係る雑所得等の分離課税の対象に加えられます
- すべての暗号資産が対象になるわけではありません。対象は特定暗号資産を暗号資産取引業を行う者に譲渡等した場合です
- 本ページは制度の一般的な説明で、個別の税務アドバイスではありません。実際の判断や手続は、税理士または所轄の税務署にご相談ください
よくある質問
Q. 海外に移住した後、日本の取引所で暗号資産を売却したら日本で確定申告が必要ですか?
A. 国税庁の暗号資産FAQ(1-8)では、外国に住む非居住者が日本の暗号資産交換業者に保有する暗号資産を売却した場合、日本での申告は不要とされています。非居住者の譲渡所得で国内源泉所得になるのは国内の不動産や一定の株式等の譲渡などに限られ、暗号資産の売却益は所得税の課税対象とされていないためです。ただし、移住先の国では課税されることがあります。また、日本に生活の本拠が残っていて居住者と判断される場合は、この扱いになりません。
Q. 暗号資産を持ったまま出国すると、出国税(国外転出時課税)がかかりますか?
A. かかりません。国外転出時課税の対象資産は、有価証券、匿名組合契約の出資の持分、未決済の信用取引・発行日取引・デリバティブ取引で、暗号資産は含まれていません。1億円の判定にも暗号資産は含めません。ただし、株式などの有価証券を1億円以上持っている場合は、別途対象になり得ます。
Q. 出国した年に売却した利益はどうなりますか?
A. 1月1日から出国の日までの居住者期間に売却・交換した分は、日本で課税されます。出国の時までに納税管理人を届け出た場合は翌年2月16日から3月15日までに確定申告し、届け出ずに出国する場合は出国の時までに準確定申告をします。
Q. 日本の取引所の口座は、移住後もそのまま使えますか?
A. 業者によって異なります。例えばビットトレードは、税務上の居住地国が「日本のみ」でなくなった顧客には原則として口座の解約を求めるとしています。また、CARFにより、居住地国が変わった場合は3か月以内に異動届出書を業者に提出する必要があります。出国前に、利用中の業者の規約やヘルプで、継続利用の可否と出金方法を確認してください。
Q. 暗号資産の税率が20%になるのはいつからですか?
A. 20%(所得税15%・住民税5%)の申告分離課税は令和8年度税制改正で法律上定められましたが、適用は、暗号資産を金融商品取引法の対象にする改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後の譲渡からです。改正法は2026年7月に成立し、公布から1年以内に施行されますが、2026年10月時点で施行日は確認できていません。2026年分の利益は従来どおり総合課税です。
Q. 暗号資産で買い物をしたり、別の暗号資産に交換したりしただけでも課税されますか?
A. はい。国税庁のFAQでは、暗号資産で商品を購入した場合や暗号資産同士を交換した場合も、保有する暗号資産を譲渡したものとして、譲渡価額と譲渡原価の差額を所得として計算するとしています。居住者のうちに行えば、日本円に換金していなくても日本で課税されます。
出典
本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、税務・法務の助言ではありません。個別の状況については税理士・税務署・年金事務所・市区町村などに確認してください。